会長声明

2008/03/12

少年法「改正」法案に関する会長声明

2008年(平成20年)3月12日
第二東京弁護士会 会長 吉成 昌之

 被害者等の審判傍聴などを内容とする少年法「改正」法案(以下「同法案」という。)が2008年3月7日、国会に上程された。同法案は、被害者に配慮しようとするものであるが、少年法の少年の健全な育成を目的とするという理念(同法1条)の実現を妨げる重大な問題がある。
 少年法は、成長発達の途上にある少年に対し、大人が受容的に接することにより、少年の健全な育成を図ろうとしているのである。このような理念のもと、少年審判は、裁判官、調査官、付添人らの教育的・福祉的な働きかけにより、少年がその犯した非行事実に真摯に向き合い内省を深める場となることが強く期待され、実践されてきている。少年法が、その審理は懇切を旨としてなごやかに行わなければならないと定めている(同法22条)のはこの趣旨である。
 ところが、今般の同法案のように、少年審判を被害者等が傍聴するということになれば、精神的に未成熟で社会的経験も乏しい少年は、心理的に萎縮し、率直に事実関係の説明を行ったり、心情を語ったりすることが困難となるおそれが高い。
 特に、少年審判は、事件発生から間もない時期に開かれるため、少年のみならず、被害者にとっても、心理的な動揺が収まっていない状況で開かれることが多い。にもかかわらず、被害者が少年審判を傍聴することになれば、当該審判廷は必然的に非常に緊張度の高いものとなり、上記少年法の理念に基づく審判の実践はおよそ困難となる。
 また、傍聴している被害者等に影響され、当該審判において、少年の家庭生育環境や生い立ちなど非行の原因と考えられる問題の深層に達することができず、審判が表層的なものとなって、少年審判の教育的・福祉的機能が損なわれるおそれも極めて強い。
 さらに、同法案のうち、記録の閲覧・謄写に関する規定については、その対象範囲を法律記録の少年の身上経歴などプライバシーに関する部分についてまで拡大することになるが、少年の更生に対する影響からみて大いに問題であり、この拡大は認めるべきではない。
 同法案による被害者等審判傍聴規定の新設は、上記の少年法の理念と目的に重大な変質をもたらすおそれがあり、当会は、同法案に強く反対する。

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