会長声明

2008/10/29

死刑執行に関する会長声明

2008年(平成20年)10月29日
第二東京弁護士会 会長 庭山正一郎
08(声) 11号

 昨日、仙台拘置支所において1名及び福岡拘置所において1名、計2名の死刑確定者に対して死刑が執行された。
 本年に入ってから5回目の死刑執行であり、これまで2月に3名、4月に4名、6月に3名、9月に3名に対し死刑が執行されており、今回とあわせて既に15名に対し死刑が執行されている。連続した大量の死刑執行であり、深い憂慮の念を示すとともに、強く抗議するものである。
 今、わが国の死刑制度は、国連をはじめとする国際社会から大きく注目されている。国際社会においては、死刑廃止が潮流となっており、死刑制度を存置する国においても、死刑の執行を停止し、あるいは死刑の適用を制限する動きが相次いでいる。2007年12月に、国連総会本会議において、死刑執行の停止を求める決議が圧倒的多数で採択されたことは、こうした流れを端的に示すものである。
 これに対して、わが国では、死刑判決数および死刑執行数がともに、近年顕著な増加をみせており、こうしたわが国の状況に対しては、国連拷問防止委員会(2007年5月)、さらに国連人権理事会(2008年6月)から深刻な懸念が示され、死刑に直面する者に対する権利保障を整備するとともに、死刑の執行を停止することが勧告されてきた。
 そして、本年10月15、16日の両日には、国際人権(自由権)規約委員会により、わが国の人権状況に関する第5回の審査が行われた。審査では、死刑制度とその運用に対して、委員からの批判が相次いでなされ、その最終所見が、まさに本日中にも採択されようとしている状況下において、あえて死刑執行に踏み切ったことは、政府が、国際社会からの要請に一切耳を傾けず、わが国が加入した人権条約を尊重する意思がないことを宣明する行為に等しい。このままではわが国は国際社会から人権国家としての評価を失うことになりかねない。
 日本弁護士連合会は、2002年11月「死刑制度問題に関する提言」を発表し、死刑制度の存廃につき国民的議論を尽くし、また死刑制度に関する改善を行うまでの一定期間、死刑確定者に対する死刑の執行を停止する旨の時限立法(死刑執行停止法)の制定を提唱し、本年3月13日の理事会において、「死刑制度調査会の設置及び死刑執行の停止に関する法律(案)」(通称「日弁連死刑執行停止法案」)を承認し、引き続き死刑問題に関する取組みを続けている。また当会は、本年1月17日、シンポジウム「死刑制度の現状と終身刑の是非」を開催した。今、わが国に求められているのは、死刑の執行を急ぐことではなく、いかにして死刑の執行を停止させるかということであって、そのためには死刑に代わる刑罰としての終身刑の是非を含め開かれた継続的な議論を行うことである。とくに来年5月には裁判員制度による裁判が始まろうとする今日において、死刑制度の存廃につき国民的議論を尽くすことは極めて重要な課題である。
 当会は、政府に対し、死刑制度の存廃につき国民的議論を尽くし死刑制度に関する改善を行うまでの一定期間、死刑の執行を停止するよう、くりかえし強く要請するものである。

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