会長声明

2009/01/29

死刑執行に関する会長声明

2009年(平成21年)1月29日
第二東京弁護士会 会長 庭山正一郎
08(声) 12号

 本日、東京拘置所において1名、名古屋拘置所において2名、福岡拘置所において1名、計4名の死刑確定者に対して死刑が執行された。
 昨年は2月に3名、4月に4名、6月に3名、9月に3名、10月に2名合計15名に対し死刑が執行されており、今回の執行はこれに続くものである。連続した多数の死刑執行であって、深い憂慮の念を示すとともに、強く抗議するものである。
 死刑の廃止または執行の停止が世界の潮流となっていることは明らかである。1990年当時、死刑存置国は96か国・死刑廃止国は80か国であったが、2008年現在、死刑存置国は59か国・死刑廃止・停止国は138か国となっている。
 国連の規約人権委員会は、日本の人権状況に関する第5回審査の総括所見(2008年10月)において、日本に対し、世論調査の結果にかかわらず、死刑の廃止を前向きに検討し、国民に対し死刑廃止が望ましいことを知らせるべきであると勧告している。また、死刑執行の事前告知制度の確立、再審申立に死刑執行停止効果を付与することや死刑判決に対する必要的上訴制度の導入など、抜本的な制度改革も勧告している。
 とくに日本の刑事司法制度は、捜査段階、公判段階、刑の確定後の執行段階のいずれにおいても、国際人権基準に照らすと十分な弁護権、防御権が保障されておらず、この点を看過したままで死刑を執行するという姿勢は、国際社会の理解が得られないことが明らかである。
 日本弁護士連合会は、2002年11月「死刑制度問題に関する提言」を発表し、死刑制度の存廃につき国民的議論を尽くし、また死刑制度に関する改善を行うまでの一定期間、死刑確定者に対する死刑の執行を停止する旨の時限立法(死刑執行停止法)の制定を提唱し、「死刑制度調査会の設置及び死刑執行の停止に関する法律(案)」を策定している。
 今、わが国が求められていることは、死刑の執行を急ぐことではない。死刑の執行を一時的に停止し、終身刑の導入の可否を含め刑罰のありかたを総合的に検討する中で死刑の問題について国民的な合意を得るための努力をすることである。
 当会は、政府に対し、国連機関による勧告を誠実に受け止めるよう求めるとともに、死刑の執行を停止し、死刑制度の問題点の改善及び死刑制度の存廃について国民的議論を行うようくりかえし強く要請するものである。

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