会長声明

2009/03/05

自衛隊のソマリア沖派遣に反対する会長声明

2009年(平成21年)3月5日
第二東京弁護士会 会長 庭山正一郎
08(声) 13号

 政府は、いわゆるソマリア沖海賊対策のために自衛隊を派遣する方針を決め、これの準備を進めている。
 今回の自衛隊派遣は、自衛隊法82条による海上警備行動としてのものであるが、同条は同法3条1項に規定された「必要に応じて公共の秩序の維持に当たる」任務を具体化したものであるところ、そもそも自衛隊の活動は、憲法9条の趣旨に沿って、「自衛のため」の範囲内に止められるものであるから、海上警備行動による「公共の秩序の維持」も我国の主権の及ぶ範囲内で、かつ「自衛のため」の範囲で行われるべきものであり、これを超えることは憲法に違反するおそれが強いものであり、許されない。
 この点、今回の自衛隊派遣は、領海を遙かに超えてソマリア沖まで至るものであるから、憲法違反の疑いを免れない。
 また、海賊行為等に対しては、従前海上保安庁により対処されてきたように、本来警察権により取り締まられるべきものである。この点において自衛隊による対処にはそもそも疑問がある上、海賊対策に協力する国家に対し武力行使を含む「必要なあらゆる措置を講じること」(安保理決議)が認められる海域に自衛隊が派遣されれば、自衛隊により、武力による威嚇さらには武力行使の事態が現実に生じ、自衛隊の武力行使によりはじめて人命が失われるという重大な事態に至る危険性も高い。自衛隊をかかる事態が予想される状況において派遣することは、憲法の平和主義の原則や、自衛の目的を逸脱した武力による威嚇さらには武力行使を厳に戒める憲法9条に、違反するおそれが強いものである。
ソマリア沖のいわゆる海賊問題は深刻な国際問題であるが、その背景には同国の複雑な政治情勢や経済問題がある。我が国の国際貢献の在り方としては、安易に自衛隊を派遣するのではなく、平和憲法の精神に則り、同国並びに沿岸諸国に対する経済的な面での復興支援や技術的支援など、非軍事的な方法で海賊問題の解決に助力すべきことこそが求められている。
 よって、当会は、自衛隊のソマリア沖派遣に反対する。

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