会長声明

2009/07/28

死刑執行に関する会長声明

2009年(平成21年)7月28日
第二東京弁護士会 会長 川崎達也
09(声) 5号

 本日,大阪拘置所において2名,東京拘置所において1名,合計3名の死刑確定者に対して死刑が執行された。

 昨年は15名に対し死刑が執行され,本年も1月に4名に対する執行がなされており,今回の執行はこれに続くものである。連続した多数の死刑執行であって,深い憂慮の念を示すとともに,強く抗議するものである。

 死刑の廃止または執行の停止が世界の潮流となっていることは明らかである。1990年当時,死刑存置国は96か国・死刑廃止国は80か国であったが,2009年現在,死刑存置国は58か国,死刑廃止国は139か国になっている。

 国連の規約人権委員会は,日本の人権状況に関する第5回審査の総括所見(2008年10月)において,日本に対し,世論調査の結果にかかわらず,死刑の廃止を前向きに検討し,国民に対し死刑廃止が望ましいことを知らせるべきであると勧告している。また,死刑執行の事前告知制度の確立,再審申立に死刑執行停止効果を付与することや死刑判決に対する必要的上訴制度の導入など,抜本的な制度改革も勧告している。

 我が国では,4つの死刑確定事件(免田・財田川・松山・島田各事件)について再審無罪判決が確定している。また,本年6月23日にはいわゆる足利事件で無期懲役刑が確定した受刑者に対する再審開始決定がなされているが,同様に精度の低いDNA鑑定に基づいて死刑判決が言い渡され,昨年死刑が執行されてしまった飯塚事件についても注目が集まっている。死刑事件にも誤判があることが明らかとなっていながら,このような過誤を生じるに至った制度上,運用上の問題点については抜本的な改善が図られておらず,誤った死刑の危険性は依然存在する。

 こうした中,本年5月21日には裁判員制度が施行され,事案によっては一般市民が裁判員制度を通じて死刑判決の言い渡しに関わる可能性も生じるようになり,死刑制度に関する関心もかつてないほど高まっている。

 日本弁護士連合会は,2002年11月「死刑制度問題に関する提言」を発表し,死刑制度の存廃につき国民的議論を尽くし,また死刑制度に関する改善を行うまでの一定期間,死刑確定者に対する死刑の執行を停止する旨の時限立法(死刑執行停止法)の制定を提唱し,「死刑制度調査会の設置及び死刑執行の停止に関する法律(案)」を策定している。

 今,わが国が求められていることは,死刑の執行を急ぐことではない。死刑の執行を一時的に停止し,終身刑の導入の可否を含め刑罰のありかたを総合的に検討する中で死刑の問題について国民的な合意を得るための努力をすることである。

 当会は,政府に対し,死刑の執行を停止し,死刑制度の問題点の改善及び死刑制度の存廃について国民的議論を行うようくりかえし強く要請するものである。

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