会長声明

2009/10/26

非嫡出子の相続分差別の撤廃を求める会長声明

2009年(平成21年)10月26日
第二東京弁護士会 会長 川崎達也
09(声) 8号

 最高裁判所第2小法廷は、本年9月30日、「非嫡出子の相続分を嫡出子の2分の1とする民法900条4号ただし書き前段の規定が憲法14条1項に違反」しないとする決定を言い渡した。その理由とするところは、「民法が法律婚主義を採用している以上、婚姻関係から出生した嫡出子と婚姻外の関係から出生した非嫡出子との区別が生じ、法定相続分につき前者の立場を後者より優遇することに合理的根拠がある」(最高裁平成7年7月5日大法廷決定の多数意見の理由)というものである。
 しかし、同決定において示された理由は、憲法24条2項が相続において憲法13条に基づく個人の尊厳を立法上の原則としたことと相いれない。ある子が、婚姻関係から出生するかどうかについては、その子が自らの意志や努力によって決めることのできない性質のものである。にもかかわらず、出生について何らの責任もない子をそのことを理由として法律上差別することは、法律婚主義を尊重するという立法目的があったとしても、合理性を見出すことはできず、立法目的を超える差別である。同じ被相続人の子でありながら、非嫡出子の相続分を嫡出子の2分の1と差を設けることは、非嫡出子が嫡出子より劣った存在とする見方にもつながるのであり、これを憲法に違反しないとする判決は、非嫡出子に対する社会的差別を追認・助長することにもなりかねない。
 嫡出子と非嫡出子の相続分を平等に扱うことは世界的な趨勢である。欧米においては、1960年代以降、非嫡出子と嫡出子の相続分を同等とする法改正が行われ、また、2001年には差別を残しているといわれていたフランスが姦生子(婚姻中の者がもうけた非嫡出子)の相続分を嫡出子の2分の1とする規定を廃止した。また、国連の女性差別撤廃委員会は、本年8月7日、わが国政府に対し、前回勧告にかかわらず「非嫡出子が依然差別を受けていることについて懸念」を示し、「嫡出でない子とその母親に対する民法及び戸籍法の差別的規定を撤廃するよう締約国に要請する」との最終見解を明らかにした。同様の勧告は、自由権規約委員会や児童の権利委員会からもなされている。
 わが国においても、既に平成8年法制審議会総会より「嫡出でない子の相続分は、嫡出である子と同等とする」旨の民法改正案が答申されているが、その後10年以上経過しても、法改正は実現されていない。
 非嫡出子の相続分差別は、合理的な理由を見出すことのできない差別であり、明らかに憲法14条1項の「法の下の平等」原則に違反する差別である。
 当会は、最高裁判所の今回の判決に対し、強い遺憾の意を表するとともに、国会において早期に非嫡出子の相続分の差別を撤廃する民法改正を行うよう求めるものである。

もどる