会長声明

2010/05/21

裁判員制度開始から1年を迎えての会長声明

2010年(平成22年)5月21日
第二東京弁護士会 会長 栃木敏明
10(声)第4号

 裁判員制度が始まり今日で1年を迎えました。
 この1年間で、全国で4000人以上の市民が裁判員・補充裁判員として、刑事裁判に関与されました。裁判員制度に対する市民の理解や関心も大きくなり、この制度が広く社会に受け入れられつつあることを高く評価したいと思います。

 裁判員裁判では、捜査官が作成した調書を読み込んで判断されるのではなく、裁判員の目の前でやりとりされる生の証言に基づいて判断がなされます。そのためには、裁判員に分かりやすく、理解しやすい説明をするための工夫が必要です。当会においても、裁判員が「見て聞いてわかる」ことができるための法廷弁護技術の研修を継続的に行い、この研修の成果が具体的な弁護活動に生かされてきています。しかし、最高裁の公表した裁判員に対するアンケートによれば、「弁護人の説明がわかりやすかった」とする意見は、裁判官や検察官に比べて格段に低いものでした。
 私たちはこの結果を真摯に受け止め、弁護技術の一層の向上に努めていかなければなりません。そのために、当会は、裁判員裁判の経験を積んだ弁護人による経験交流に加え、裁判官を講師とした研修会、裁判員経験者や裁判員裁判を傍聴したメディア関係者との意見交換の機会を設けていきたいと考えています。
 さらに、今後、否認事件、責任能力の有無が問題となる事件、死刑求刑が予想される事件等、より複雑で困難な裁判が行われることをふまえ、個々の裁判員裁判事件における弁護技術に対する助言等を行う体制づくりを進め、現在進行中の裁判員裁判における弁護人のバックアップを強化します。

 施行3年後に行われる見直しに向けた検証も重要です。裁判官が無罪推定の原則を適切に説明し、裁判員の意見を尊重しながら公平な評議を行っているか、裁判員の経験が新たな裁判員や市民に広く伝えられるために守秘義務がどの程度緩和されるべきか等様々な論点について、裁判員制度に関する実証的な検証を本格的に進めていく必要があります。また、裁判員裁判事件・非対象事件を問わず、虚偽自白によるえん罪を防止するために、取調べ過程がすべて録画録音されて、取調べが適正に行われているかどうかを容易に検証できるよう取調べの可視化の実現を引き続き強く訴えていきます。

 私たちは、裁判員裁判が今後も順調に運用されるよう努めるとともに、被疑者・被告人の権利の保護とえん罪防止のために一層の努力を重ねていく所存です。

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