会長声明

2011/03/25

衆議院選挙定数配分最高裁大法廷判決に関する会長声明

2011年(平成23年)3月25日
第二東京弁護士会会長 栃木 敏明
10(声)第14号

 2009年(平成21年)8月に行なわれた衆議院総選挙の小選挙区選挙について、議員1人当たりの有権者数の格差が最大2.304倍(高知県第3区と千葉県第4区との格差。なお、2倍以上の格差がある選挙区が45)あった選挙区割りは、投票価値の平等を保障した憲法に違反して無効であるとして、各地の有権者が選挙の無効(やり直し)を求めていた訴訟について、3月23日、最高裁判所大法廷は判決を言い渡した。
 本判決の内容は、大要、1.いわゆる「1人別枠方式」(小選挙区300議席について、各都道府県に1議席ずつ配分したうえで、残り253議席を人口比例で割り振る方式)は、遅くとも本件選挙時においては、憲法の投票価値の平等の要求に反する状態(違憲状態)に至っていた、2.したがって、「1人別枠方式」を前提とする本件選挙区割りも、憲法の投票価値の平等の要求に反する状態(違憲状態)に至っていた、3.しかしながら、本件選挙までに「1人別枠方式」の廃止及び本件選挙区割りの是正をしなかったことをもって、憲法上要求される合理的期間内に是正がなされなかったとはいえない、というものである。
 最高裁が、衆議院選挙における投票価値の格差について違憲状態と判断したのは1993年1月20日判決(最大格差3.18倍)以来2度目である。本判決は、最高裁が小選挙区制における3倍未満(2.304倍)の格差を違憲状態と判断した初めての事例であり、併せて、その格差を生ぜしめた根本的な原因である「1人別枠方式」を「できる限り速やかに廃止する必要がある」ことを明確に指摘した点において、高く評価できる。
 もっとも、本判決は、今後の衆議院選挙における投票価値の平等の実現を保証するものではなく、その実現は国会が自律的に抜本的な見直しができるか否かにかかっている。折しも、首相の公的諮問機関である衆院選挙区画定審議会(区画審)は、去る2月に公表された2010年国勢調査の速報値をもとに、10年に1度の区割り改定案の作成に着手したところであるが、これまでの国会の対応のあり方を前提とすれば、「1人別枠方式」の廃止を含む抜本的見直しに至らないのではないかとの懸念も存する。
 したがって、本来、本判決においては、「今後、国会が速やかに1人別枠方式を廃止し、選挙権の平等にかなう立法的措置を講じない場合には、将来提起された選挙無効請求事件において、当該選挙区の結果について無効とすることがあり得ることを付言すべき」(宮川光治裁判官の反対意見)であったものであり、見直し作業について、国会にはもはやこれ以上の怠慢が許される余地はなく、また、見直しに当たっては、「全国民の代表」である国会議員を選任する選挙権の重要性に鑑みて、投票価値の平等が貫徹される必要がある。
 当会は、国会に対し、本判決に沿って直ちに「1人別枠方式」を廃止するとともに、次回の衆議院選挙までに選挙区割りの見直しを行い、限りなく1対1までに解消するよう強く求めるものである。

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