会長声明

2012/02/14

裁判員裁判上告審逆転無罪判決に関する会長声明

2012年(平成24年)2月14日
第二東京弁護士会会長 澤井 英久
11(声)第8号

 昨日(2月13日)、最高裁判所第一小法廷は、覚せい剤取締法(営利目的輸入)等に問われていた被告人に対し、東京高等裁判所の有罪判決を破棄自判し、検察官の控訴を棄却した。これにより、第一審の無罪判決が確定した。

 本件は第一審(千葉地方裁判所)において裁判員裁判で初めて全面無罪判決が下された事案であり、これに対して検察官が控訴し、控訴審が第一審の無罪判決を破棄自判し、有罪判決(懲役10年,罰金600万円)を言い渡したことから、最高裁判所の判断が注視されていた。

 本判決は、控訴審が事実誤認があるというためには、第一審判決の事実認定が論理則、経験則等に照らして不合理であることを具体的に示す必要があるとし、このことは、裁判員制度の導入を契機として、第一審において直接主義・口頭主義が徹底された状況においては、より強く妥当すると判示した。

 第一審が無罪判決を出した場合には検察官控訴を認めるべきではないとの考えも有力であるところ、本判決は、二重処罰の禁止に触れるとの主張は排斥しつつ、控訴審判決は、第一審判決が論理則、経験則等に照らして不合理であることを具体的に示したものとはいえないとして破棄し、被告人を無罪としたものである。

 事実認定に市民感覚を反映させようとする裁判員制度の制度趣旨に鑑みれば、第一審の無罪判決を尊重し、控訴審が破棄自判できる場合を制限的に解した本判決の態度は正当である。ただし、第一審有罪で被告人・弁護人が控訴した場合には、無辜の救済を図るため控訴審がより積極的に第一審の事実認定を見直すべき場合がありうる点は留意すべきである。

 当会は、今後も裁判員裁判及びその控訴審の運用状況を引き続き見守るとともに、裁判員制度をよりよい制度とするための努力を継続する所存である。

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