会長声明
死刑執行に関する会長声明
第二東京弁護士会 会長 庭山正一郎
08(声) 9号
本日、東京拘置所で1名、大阪拘置所で2名、合計3名の死刑確定者に対して死刑が執行された。昨年は4月、8月、12月に各3名合計9名の死刑確定者に対して死刑が執行されており、本年も2月に3名、4月に4名、6月に3名に対し死刑が執行され、今回とあわせて既に13名に対し死刑が執行されている。連続した大量の死刑執行であり、深い憂慮の念を示すとともに、強く抗議するものである。
死刑については、死刑廃止条約が1989年12月15日の国連総会で採択され(1991年発効)、1997年4月以降毎年、国連人権委員会(2006年国連人権理事会に改組)は「死刑廃止に関する決議」を行い、その決議の中で日本などの死刑存置国に対して「死刑に直面する者に対する権利保障を遵守するとともに、死刑の完全な廃止を視野に入れ、死刑執行の停止を考慮するよう求める」旨の呼びかけを行った。このような状況の下で、死刑廃止国は着実に増加し、1990年当時の死刑存置国96か国、死刑廃止国80か国(法律で廃止している国と過去10年以上執行していない事実上の廃止国を含む。)に対し、2007年12月24日現在、死刑存置国62か国、死刑廃止国135か国と、死刑廃止が国際的な潮流となっていることは明らかである。
また、昨年5月18日に示された国連の拷問禁止委員会による日本政府報告書に対する最終見解・勧告においては、わが国の死刑制度の問題が端的に示された上で、死刑の執行を速やかに停止するべきことなどが勧告され、さらに、昨年12月18日には、国連総会本会議において、すべての死刑存置国に対して死刑執行の停止を求める決議が圧倒的多数で採択された。また本年5月の国連人権理事会第2回普遍的定期的審査では、我が国における死刑の執行の継続に対する懸念が多数表明され、政府に対し死刑の停止が勧告された。
わが国の死刑制度については、4つの死刑確定事件(免田・財田川・松山・島田各事件)の再審無罪判決が確定し、死刑判決にも誤判が存在したことが明らかとなっている。このような誤判を生じるに至った制度上、運用上の問題点については、抜本的な改善が図られておらず、誤判の危険性は依然不可避である。また、死刑と無期の量刑について明確な判断基準が存在しないなかにあって、重罰化の傾向も顕著であり、全国の裁判所で死刑判決の言い渡された数は、最高裁の記録で確認できる1980年以降では一昨年の44人がそれまでの最多であったところ、昨年1年間では47人に上っており、2年連続で死刑判決の言い渡し数が更新されたことになる。重罰化の流れのなかで、死刑確定者の数は100名を超えており、大量の死刑執行が危惧されるなか、今回の死刑執行がなされたものである。
日本弁護士連合会は、2002年11月「死刑制度問題に関する提言」を発表し、死刑制度の存廃につき国民的議論を尽くし、また死刑制度に関する改善を行うまでの一定期間、死刑確定者に対する死刑の執行を停止する旨の時限立法(死刑執行停止法)の制定を提唱し、本年3月13日の理事会において、「死刑制度調査会の設置及び死刑執行の停止に関する法律(案)」(通称「日弁連死刑執行停止法案」)を承認し、引き続き死刑問題に関する取組みを続けている。また当会は、本年1月17日、シンポジウム「死刑制度の現状と終身刑の是非」を開催した。今、わが国に求められているのは、死刑の執行を急ぐことではなく、いかにして死刑の執行を停止させるかということであって、そのためには死刑に代わる刑罰としての終身刑の是非を含め開かれた継続的な議論を行うことである。とくに来年5月には裁判員制度による裁判が始まろうとする今日において、死刑制度の存廃につき国民的議論を尽くすことは極めて重要な課題である。
当会は、政府に対し、死刑制度の存廃につき国民的議論を尽くし死刑制度に関する改善を行うまでの一定期間、死刑の執行を停止するよう、強く要請するものである。