衆議院選挙定数配分東京高裁判決に関する会長声明

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更新日:2013年03月18日

2013年(平成25年)3月18日
第二東京弁護士会会長 橋本 副孝
12(声)第10号

 2012年(平成24年)12月16日に行われた衆議院総選挙の小選挙区選挙について、選挙区人口に比例しない選挙区割規定(最大2.425倍の較差)が、国民主権の法理や投票価値の平等を保障した憲法に違反すること等を理由に、選挙の無効を求めていた訴訟について、本年3月6日、東京高等裁判所は、本件選挙を無効とせず、違法であることを宣言するにとどめる判決(違憲違法判決)を言い渡した。
 本判決は、
①投票価値の平等を可能な限り尊重し、人口比例の選挙に近づけていくことは、憲法上の要請であると明言した点 ②2011年大法廷判決から1年8ヶ月強の期間があったにもかかわらず選挙区割りの是正がなされないままに本件選挙が実施されたことについて、国会が憲法上要求される合理的期間内に是正を行わなかったと明確に認定し、本件選挙区割規定が違憲であると断じた点 ③国会が決定する選挙制度において現実に投票価値の不平等の結果が生じる場合には、当該選挙区割りの合理性について、国が立証責任を負う(当該立証に国が奏効しない限り当該選挙区割りは違憲状態となる)ことを明確にした点 ④選挙を無効とすべきか否かの判断においては、無効の効力を判決確定後一定期間が経過した後にはじめて発生するという将来効に限定することも検討すべきであるとし、無効判決の効果について具体的検討を行なっている点 において重要な意義を有するものであり、同種事件に関して、今月中に下される予定の複数の高等裁判所判決の先例になりうるものとして積極的に評価することができる。
 また、本判決が、「国民主権の原理及び代表民主制の統治機構上の理念から、厳格な投票価値の平等(人口比例選挙)の要請が導き出される」とする原告の主張を排斥し、緊急是正法によっても2倍近い投票価値の不平等が解消しないにもかかわらず、国会が今後、本件選挙区割りを、憲法が要求している投票価値の平等にかなったものに是正することが期待できる等とした点は、投票価値の捉え方についての相違が端的に表れた重要な判断事項であり、今後のさらなる議論の深化と判例の展開に注目したい。
 当弁護士会としては、国会に対し、国民主権の法理の下、可及的速やかに、憲法上の要請である投票価値の平等原則に則った、人口比例の選挙に近づける選挙区割を実現するよう求めるものである。

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