「生活保護法の一部を改正する法律案」による生活保護制度の改悪に反対する会長声明

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更新日:2013年11月27日
2013年(平成25年)11月27日
第二東京弁護士会会長 山岸 良太
13(声)第14号

 本年10月15日、生活保護法の一部を改正する法律案(以下「改正案」という。)が閣議決定された。
 改正案は、要保護者をより一層委縮させることにより、保護申請を妨げ、生存権(憲法25条)保障を空文化させる懸念がある。

 まず、改正案24条1項は、保護申請に要保護者の資産及び収入状況等を記載した書面の提出を原則化し、同条2項は、申請書に保護の要否判定に必要な書類の添付を求めている。同条各項には、いずれも、特別な事情があるときはこの限りでないとの但し書きが付されているが,どの程度の事情が「特別の事情」かが不明確であるため,保護実施機関の裁量によることとなり,特別事情に当たらないとして申請書の交付を拒否したり,資料不足を理由に申請を受理しない危険が高い(いわゆる「水際作戦」)。とりわけ、ホームレス状態の者や、DVから荷物も持たずに逃げ出してきた者等は、預金通帳等の資料を用意することが困難なため、生活保護制度から閉め出されることになりかねない。したがって、改正案は、水際作戦を助長し、要保護者の生活保護申請を不当に妨げるものである可能性が高く、到底容認できない。
 次に、改正案24条8項は、保護実施機関に対し、保護開始の決定をしようとするときは、あらかじめ、扶養義務者に対する通知を義務付けている。また、同28条2項は、保護実施機関が、保護開始後にも要保護者の扶養義務者等に対し報告を求めることができるとし、同29条1項は、過去に生活保護を利用していた者の扶養義務者に関してまで、官公署等に対し必要な書類の閲覧等を求めたり、銀行、信託会社、雇い主等に報告を求めることができるとしている。
 このように、扶養義務者への通知や調査が強化されることにより、親族間のあつれき等を懸念して申請を断念する要保護者が増加するおそれがある。また、DV等の家庭内の劣悪な状況から逃げてきた要保護者は、多大な萎縮的効果を受ける可能性がある。かかる効果をもたらす改正案は、生活保護の趣旨を没却するものであり断じて認められない。

 以上のとおり、改正案は、水際作戦を助長し、要保護者を萎縮させることにより、生活保護を利用することのできない要保護者を続出させ、多数の自殺・餓死・孤立死等の悲劇を招くおそれがある。これは我が国における生存権(憲法25条)保障を空文化させるものであって生活保護の権利性を全く理解しないものである。よって、当弁護士会は書面主義や報告の強制等の生活保護制度の改悪に強く反対する。
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