東京都議会議場における女性差別にあたる野次及びその後の対応を非難する会長声明

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更新日:2014年06月27日

2014年(平成26年)6月27日
第二東京弁護士会会長 山田秀雄
14(声)第7号

 2014年6月18日、東京都議会の本会議場において、塩村文夏議員(みんなの党)が、女性の妊娠・出産をめぐる都の支援体制について一般質問をしていた際、自民党議員らの座る一角から、男性の声で、「自分が早く結婚した方がいい。」「産めないのか。」などと言った野次を浴びせかけられた。その際、議長が野次を行った議員を叱責することもなく、議場には笑いさえ起き、議事進行が中止されることもなかった。その後、批判が相次いだが、野次を飛ばした人物は名乗り出なかった。塩村議員らは、東京都議会議長宛、処分要求書を提出したが、被処分人が特定されていないとして受理されなかった。最終的には野次の一部を飛ばしたことを認めた自民党の鈴木章浩議員が塩村議員に対して謝罪をしたが、鈴木議員に対する処分が科されるかは不明であり、野次を飛ばした他の議員に関する調査等も行われていない。
 現在の日本社会においては、女性を取り巻く社会環境に由来する様々な障害があり、女性が結婚、出産を望んでも、それに伴う重い負担が生じることが必至で、容易には望めない現状がある。また、働く女性にとっては、妊娠・出産によって、男性よりも遥かに重い家事・育児負担を負わされる現状があり、このような現状が出生率を押し下げている大きな原因の一つでもある。塩村議員は、このような社会環境下で悩み苦しむ女性の気持ちを代弁し、女性を取り巻く問題を解決するために一般質問をしていた最中であった。
 そもそも、結婚するかしないか、子どもを産むか産まないといったことは、個人の自己決定権にかかる選択であり、いずれかを強要するような発言はそれ自体が人権侵害にあたる。前述のような野次は、塩村議員に対する人権侵害にあたり、かつ、女性を蔑視して揶揄し、侮辱する女性差別発言である。
 都議会議場における議員の発言の社会的影響力は大きく、このような重い女性差別発言が見過ごされることは大きな問題である。既に、海外のメディアも、この女性差別発言及びそれに対する東京都議会の対応に注目しており、到底軽視することは出来ない。
 当弁護士会は、この現状を深く憂慮し、今後かかる女性差別発言が繰り返されることを防ぐためにも、あいまいな幕引きをするべきではないと考える。よって、当弁護士会は、東京都議会に対し、このたびの女性差別発言をした都議会議員を特定した上で、鈴木議員を含め厳正に処分するよう強く求め、さらに、国及び地方公共団体に対し、今後決して、議場での女性差別発言が行われることのないよう申し入れる。

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