自主避難者への住宅無償提供終了方針に対する抗議声明

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更新日:2015年06月24日

2015年(平成27年)6月24日
第二東京弁護士会会長 三宅 弘
15(声)第5号

 福島県は、本年6月15日、東日本大震災と東京電力福島第一原発事故に伴う避難者が入居する応急仮設住宅と民間借り上げ住宅について、災害救助法に基づき1年ごとに期限を延長してきた住宅の無償提供を、自主避難者に対しては2017年(平成29年)3月で打ち切る方針を公表した。
 ここにいう自主避難者の対象地域は、現時点で避難指示解除がなされていない楢葉町、富岡町、大熊町、双葉町、浪江町、葛尾村、飯舘村、南相馬市(一部)、川俣町(一部)及び川内村(一部)を除く全県であり、一部が旧警戒区域でその後避難指示が解除された田村市や旧緊急時避難準備区域も含んでいる。これらの地域からの避難者数は、福島県によれば現在約2万5000人と推計されている。
 このような状況において当該方針が実行されれば、多くの者が住む所を奪われ、経済的困窮に立たされることになる可能性が高い。避難先では、公営住宅の数に限りがあることから、経済的な理由により住居を確保すること自体が難しいことも予想され、自己の意思に反し事実上帰還を迫られる者も数多くいると思われる。
 しかしながら、福島県内には避難指示の有無にかかわらず、今なお放射線量が高い地点は少なくない。除染作業を完了した地域であっても山林は手つかずの状態である。放射線除去土壌の仮置き場は福島県内に約800箇所もあり、放射線への不安感、嫌悪感は避難していない者も感じていることである。また、避難により人口が流出し、コミュニティや商業施設・学校・病院などのインフラ基盤が一変した地域も数多くある。さらに避難先で子どもがようやく学校生活になじんだのにまた転校を余儀なくされるのか、仕事を確保できたのにまた辞めなければならないのかという声が多く聞かれるところである。
 様々な不安や事情により、帰還することは決して容易ではないという現実がある。
 そもそもこれらの者は、自ら望んで避難したわけではない。原発事故という未曾有の人災により、被ばく不安から逃れるためにやむなく全国各地に避難している者であり、もとより何の落ち度もない。既に4年以上に及ぶ避難生活により、様々な精神的・肉体的苦痛を受けつつ生活している中で、避難先での住宅の無償提供は生活していくためのいわば「生命線」である。それにも関わらず、あと僅か2年にも充たない期限で、無償提供を打ち切ることは、幸福追求権(憲法13条)、生存権(憲法25条)の侵害に他ならない。
 福島県は、自主避難者の帰還・生活再建に向けた県の支援策で対応する旨を発表しているが、避難者の避難する権利を侵害し、生活基盤を奪った状態でどのような支援策を示したとしても何ら有効なものではない。
 よって、当弁護士会は、福島県に対し、自主避難者への住宅の無償提供を2017年(平成29年)3月末で打ち切るとしたことに抗議し、この撤回を求めるとともに、政府に対し、改めて被災者の意向や生活実態に応じて避難先住宅の供与を更新する制度の立法措置を講ずるよう求める。

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