死刑執行に抗議する会長声明

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更新日:2015年06月25日

2015年(平成27年)6月25日
第二東京弁護士会会長 三宅 弘
15(声)第7号

 本日、名古屋拘置所において、1名に対して死刑が執行された。上川陽子法務大臣による初めての死刑執行であり、第2次安倍内閣以降において死刑が執行されたのは、去年8月以来、7回目で、合わせて12人になる。本件は、控訴の取下げを争っていた事案であるが、上級審の判断を受けられないまま確定したものとして、死刑の執行がなされたことになる。極めて遺憾であり、死刑執行に強く抗議する。
 昨年、静岡地方裁判所が、袴田巖氏の第二次再審請求事件について、再審を開始し、死刑及び拘置の執行を停止する決定をした。袴田事件は、現在、東京高等裁判所において、即時抗告審が行われているが、もし死刑の執行がなされていたならば、まさに取り返しのつかない事態となっていた。袴田事件の再審開始決定により、えん罪の恐ろしさはもちろんのこと、死刑制度の問題点がいっそう明らかになっていたのである。
 昨年実施された政府の死刑制度に関する世論調査の結果、「死刑もやむを得ない」との回答が80.3%あったものの、そのうち40.5%は「将来的には、死刑を廃止してもよい」であり、また、仮釈放のない終身刑が導入されるならば「死刑を廃止する方がよい」が37.7%、終身刑が導入されても「死刑を廃止しない方がよい」が51.5%であり、世論は分かれており、死刑廃止の可否や死刑を廃止した場合の代替刑について議論の余地があることは明らかである。しかし、行政機関情報公開法に基づく情報公開請求によるとしても、死刑執行情報の公開は極めて不十分である。
 死刑の廃止は国際的な趨勢であり、世界で死刑を廃止又は停止している国は140か国に上っている。死刑を存置している国は58か国であるが、2014年に実際に死刑を執行した国は、さらに少なく日本を含め22か国であった。いわゆる先進国グループであるOECD(経済協力開発機構)加盟国(34か国)の中で死刑制度を存置している国は、日本・韓国・米国の3か国のみであるが、韓国は17年以上にわたって死刑の執行を停止し、米国の19州は死刑を廃止しており、死刑を国家として統一して執行しているのは日本のみである。こうした状況を受け、国際人権(自由権)規約委員会は、昨年、日本政府に対し、死刑の廃止について十分に考慮すること等を勧告している。
 当弁護士会は、これまでの死刑執行に対して強く抗議してきたところであるが、今回の死刑執行に対しても強く抗議するとともに、改めて死刑執行を停止し、死刑に関する情報を広く国民に公開したうえで、死刑の代替刑としての仮釈放のない終身刑の是非も含め死刑制度の廃止について全社会的議論を直ちに開始することを求めるものである。

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