安全保障法制改定法案の採決強行に抗議し廃止・改正を求める声明

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更新日:2015年09月24日

2015年(平成27年度)9月24日
第二東京弁護士会 会長 三宅 弘
15(声)第13号

 9月17日の参議院平和安全法制特別委員会と、19日未明の参議院本会議において、平和安全法制整備法案及び国際平和支援法案からなる本法律の採決が強行された。とりわけ、同特別委員会の委員長の周りを、同委員以外の与党議員までもが取り囲み、地方公聴会報告や総括質疑がなされないままでの、委員長による質疑打切り・法案採決の強行は、およそ「良識の府」における採決とは言い難く、極めて異常な光景であった。本来、防衛・外交にかかる国会審議は、特定秘密保護を口実にすることなく、十分な情報公開を前提として、熟議によって尽くされるべきものである。

 憲法は、前文で全世界の国民が平和のうちに生存する権利を確認し、第9条で国際紛争を解決する手段として、国権の発動たる戦争と武力行使を永久に放棄する恒久平和主義を明示しており、憲法習律としても、集団的自衛権の行使はもちろん、戦争を後方支援する自衛隊を海外に派遣することは認められないという解釈が確立されてきた。ところが本法律は、憲法第9条に関するこれまでの政府の公式見解や日米安保条約の解釈を超えて、集団的自衛権の行使を容認し、他国の軍隊の戦争を後方支援するために自衛隊の海外派遣を可能にし、後方支援と称して核を含む武器の運搬提供を可能にして武力行使の事態をも生じさせる危険があり、明らかに立憲主義、恒久平和主義に反している。
 この間、衆議院憲法審査会では、与党推薦を含む3名のすべての憲法学者が本法案について「憲法違反」と断じ、その後も元内閣法制局長官らや圧倒的多数の憲法学者、遂には元最高裁判所長官までが憲法違反ないしその疑いがあると評価するに至った。

 本法律は、10の法律の改正案を1つの法案にまとめた「平和安全法制整備法」と1つの新法で構成されているところ、それぞれが複雑な内容を持っており、これをまとめて一括審議したことは、国民の理解をより一層困難にした。本法律については、そもそも違憲との評価に加え、数多くの疑問が指摘されている。参議院における審議においても、ホルムズ海峡における機雷掃海の必要性もなくなり、また、米艦への武力行使時における存立危機事態の認定に際し邦人が乗艦していることも要件ではないことが明らかになった。これによって集団的自衛権行使は立法事実が欠如していることが示された。PKO法を拡大改変して、治安維持、駆けつけ警護及び任務遂行妨害排除型武器使用を認めることは、自衛隊による海外での武力行使に至る可能性を限りなく高めている。これらに対する政府の説明は極めて不十分であり、疑問は解消されなかった。

 また、学生や母親と子どもを含めた多くの市民が日本全国でデモや集会に参加し、本法律に対して反対の声をあげる動きが広がった。直近の世論調査においても今国会での本法案成立に反対する意見が多数を占めていた。このことは、先の大戦に対する痛切な反省にもとづいて制定された日本国憲法の下、民主主義や恒久平和主義、そして憲法に反する政治を許さないとする立憲主義の考え方が、国民に十分に理解されたことを示すものと言える。
 にもかかわらず、衆議院にとどまらず参議院までもが採決を強行して本法律を成立させたことに対して、立憲民主主義国家としてのわが国の歴史に大きな汚点を残したものとして強く抗議するとともに、今後も立憲主義を堅持するために本法律の廃止・改正を強く求める。

安全保障法制改定法案の採決強行に抗議し廃止・改正を求める声明(PDF)

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