辺野古埋立承認取消についての会長声明

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更新日:2015年12月04日

2015年(平成27年)12月4日
第二東京弁護士会 会 長 三 宅   弘
15(声)第16号

 沖縄県の翁長雄志知事は、本年10月13日、国(沖縄防衛局長)の申請を踏まえてなされた、辺野古に米軍の新基地を建設するための公有水面埋立承認を取り消した。これに対し、沖縄防衛局長は、同月14日、国土交通大臣にその取消処分に対する不服申立である審査請求をし、合わせて、その取消処分に対する執行停止の申立をし、同月27日、国土交通大臣は執行停止の決定をした。
 しかし、上記のような国の審査請求や執行停止は、違法であり、無効である可能性が極めて高く、しかも後述する代執行の訴訟を提起する資格とも矛盾する。すなわち、上記の審査請求や執行停止の根拠とされている行政不服審査法の立法趣旨は、国民に対して広く行政の行為に対する不服申立の方法を認めることで、簡易迅速な手続による国民の権利利益の救済を図るとともに、行政の適正な運営を確保することにある(同法1条1項)。他方で、上記の審査請求や執行停止の申立を行った国は、新基地の建設という行政の目的を達成するために公有水面埋立の申請を行った、行政主体としての国であり、私人としての権利行使と同様に取り扱われるものではない。したがって、上記の審査請求や執行停止は、行政不服審査法の本来の趣旨を逸脱するものであり、本来、法的に認められるものではない。
 国と地方の機関の間での紛争は、地方公共団体の長について、地方自治法上、第三者機関である国地方係争処理委員会に対する審査の申出(同法250条の13第1項)や、違法な国の関与の取消を求める高等裁判所への出訴(同法251条の5)という制度がある。また、国については、同法上、法定受託事務である埋立承認取消処分を争う場合には、知事に対し是正の要求(同法245条の5)又は是正の指示(同法245条の7)を行い、知事がこれに従わない場合には、不作為の違法確認を求める高等裁判所への出訴(同法251条の7)という制度がある。これらの地方自治法上の制度に依ることなく国の申請を地方の首長が認めない場合に、それを国が自らの裁量で取り消したり停止したりできるとすれば、地方自治の本旨(憲法92条)が全く無視されることとなってしまうからである。しかし、国は、これらの地方自治法上の制度に依らない上記審査請求及び執行停止により、埋立工事を強行しようとしている。
 国は、法的根拠なしに、本来予定されている上記の地方自治法上の制度によらずに、自己に有利な結果を得ようとしていると言っても過言ではない。
 他方で、同年11月17日、国土交通大臣が沖縄県知事を被告として、東京高等裁判所に対し、沖縄県知事がした埋立承認取消処分の取消を求める代執行の訴訟(同法245条の8)を提起した。この訴訟は、大臣が、行政機関としての資格に基づき行うものであり、国が私人の権利行使と同様に取り扱われるものとしての立場で上記の審査請求及び執行停止を行うことと、全く矛盾するものである。
 このように、上記の審査請求と執行停止が違法・無効である可能性が極めて高く、しかも上記の代執行の訴訟を提起する資格とも矛盾しているのであるから、国は、矛盾を呈する法的手段にたよることなく、辺野古の海の環境保全と基地負担の根本的軽減を求める沖縄県民の意思に思いをいたし、辺野古の海の埋立を取り止めるべきである。

辺野古埋立承認取消についての会長声明(PDF)

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