特定秘密保護法の廃止・抜本的見直しと情報公開法の改正を求める会長声明

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更新日:2015年12月10日

2015年(平成27年)12月10日
第二東京弁護士会 会 長 三 宅   弘
15(声)第17号

 特定秘密保護法は、集団的自衛権行使容認の閣議決定に先立ち、2013年12月に採決を強行されて成立し、2014年12月10日に施行されている。その後、安保関連法案が国会に提出され、採決を強行された。
 特定秘密保護法は、行政機関が秘密指定できる情報の範囲が防衛、外交、特定有害行為、テロリズムと広範かつ曖昧であり、その漏えい、探知等が刑罰によって規制されることから、治安立法、軍事立法としての性格を色濃く持っている。施行1年の運用をみても、内閣府内に設置された情報保全監察室や、国会の情報監視審査会において、秘密指定の項目の概要等が報告されるにとどまっている。秘密指定の実態を検討し、特定の秘密指定の是非を判断することがなされていない。かえって、これをチェックしようとする国民、国会議員、報道関係者などを重罰規定によって牽制する結果、主権者である国民が正しい意思決定を行うために必要な情報にアクセスすることができなくなっている。
 今般の安保関連法案の国会審議においても、イラクに派遣された陸上自衛隊の報告書が衆議院に提出されたところ、多くが墨塗りされていた。野党側が独自に墨塗りされていない報告書を入手して、陸上自衛隊の危険な活動の実態を暴露しながら全文を提出するように要求し、その結果、特定秘密でも何でもない報告書全文が国会に提出された。この二つの報告書を比較すれば、行政機関が特定秘密に該当すると考える情報は徹底的に市民、国会に開示されないのだということが明らかになった。仮に安保関連法制に基づく自衛隊の海外派遣が強行されようとして、防衛、外交上の秘密指定が濫用されては、戦前のように、国民の目と耳がおおわれて誤った戦争に引きずり込まれることにもなりかねない。
 2014年7月には、国連自由権規約委員会が、勧告23項において、自由権規約19条に基づき、「最近国会で採決された特定秘密保護法が、秘密指定の対象となる情報について曖昧かつ広汎に規定されている」点などを指摘している。世界中の専門家が国家安全保障と情報の権利に関して取りまとめた規律の明文化を求めるツワネ原則に則しても、情報公開制度や公文書管理制度を改正するなどし、国民の知る権利をより一層保障する立法の実現を改めて提案する必要もある。また、特定秘密保護法が濫用されて、不当な逮捕・公判請求がなされないよう、弁護人としての活動マニュアル等を作成することや、秘密情報取扱者に対する適性評価としての情報提供がプライバシーを侵害していないかをチェックすることも必要である。
 とりわけ、安保関連法制と特定秘密保護法はセットでこれを監視する必要がある。
 既に、防衛や外交を取材する新聞記者からは、従来であれば出てきたような情報が出ないようになっているとの説明があり、特定秘密保護法が役所の雰囲気に影響を与え情報が提出されにくいという懸念が示されている。アメリカの情報自由法では国防・外交情報が非開示とされるのは大統領令に基づき秘密指定された場合に限られ日本の場合より明確であり、また、情報保全監察局(ISOO)による秘密指定解除の制度も一定の成果をあげている。これに対して、日本の情報公開制度では公表済みの新聞記事ですら不開示とされる事例も見受けられる。不開示事由の明確化、開示請求手数料の廃止、公共利益のための請求については開示実施手数料の引下げないし廃止、開示請求者が勝訴した情報公開訴訟の弁護士費用を国が負担すること(アメリカではかなり多額の費用が払われる例もある)、裁判所におけるインカメラ審理(口頭弁論期日外証拠調手続)の導入、すべての地方裁判所で訴訟を提起できるようにするための情報公開訴訟の裁判管轄の拡大などが求められている。世界の各国が加入し情報公開のレベルを高めあおうとするオープン・ガバメント・パートナーシップに参画することも必要である。
 しかし、安保関連法制に伴い自衛隊の活動が広範化、活発化していくことが想定され、防衛分野においてはこれまでも過剰な秘密指定がなされてきたところから、今後、秘密はさらに増え、国民が一層重要な情報から遠ざけられていくことが懸念される。
当弁護士会は、特定秘密保護法施行1年を機として安保関連法の廃止を追求していくとともに、特定秘密保護法についても廃止を含めた抜本的見直しをし、情報公開制度も知る権利をより一層担保するものに改正していくことを求めるものである。

特定秘密保護法の廃止・抜本的見直しと情報公開法の改正を求める会長声明(PDF)

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