通常国会での安全保障関連法の徹底審議を求めるとともに 臨時国会を開催しなかったことを遺憾とする会長声明

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更新日:2015年12月18日

2015年(平成27年)12月18日
第二東京弁護士会 会 長 三 宅 弘
15(声)第19号

 2015年(平成27年)10月21日、野党5党と無所属の衆議院議員125人、参議院議員84人が、臨時国会の召集を要求したにもかかわらず、政府は、臨時国会を召集せず、12月15日に、例年1月後半に召集される通常国会を2016年(平成28年)1月4日に召集することを閣議決定した。
 当弁護士会は、衆参両議院において採決が強行された安全保障関連法(以下「安保関連法」)が日本国憲法に違反するという立場からさらなる徹底審議を求めると共に、臨時国会を開催しなかったことについて遺憾であることを表明する。
 安保関連法が立憲主義の基本理念並びに恒久平和主義及び国民主権の基本原理に違反することは、既に当弁護士会の会長声明で明らかにしたところである。これに対し、政府は、安保関連法成立後の記者会見等で、今回の安保関連法について徴兵制につながる、戦争に巻き込まれるという批判について、しっかりと国民に説明する、合憲性に確信を持っているなどと述べてきた。
 しかしながら、そもそも集団的自衛権行使を内容とする安保関連法は、ほとんどの憲法学者、元内閣法制局長官ら、さらには元最高裁判事や同元長官までもが違憲であると指摘してきたものである。2015年(平成27年)7月1日の閣議決定にかかる集団的自衛権の行使容認の新三要件のうち、第1要件の「存立危機事態」(改正自衛隊法76条、同武力攻撃事態法2条4号)は、国会審議においても「日米同盟が揺らぐ」(岸田外相)、「オイルショック」(安倍総理)などがこれに該当すると答弁されているが、この第1要件自体が曖昧で歯止めとならないことは明白で、立法事実に疑義がある。その上、第2、第3要件は、改正自衛隊法76条の法文に明記もされていないことから法文解釈としての疑義がある。加えて、集団的自衛権行使が正当化されるためには、①被侵害国が侵害国により武力行使を受けたことを宣言し、②被侵害国が防衛の協力を要請することの2要件が必要とされている(国際司法裁判所・ニカラグア判決)ところ、条文にはこの点の明記もなく、国際法の理解として正当と言えるのかも疑問である。
 また後方支援においては、従来の「戦闘地域」と「非戦闘地域」の区別が廃止され(重要影響事態法3条)、自衛隊は新たに弾薬の供与や発信準備中の航空機への給油が可能にされ(同条別表第一、第二)、外国軍隊との武力行使の一体化の危険性が増大したにもかかわらず、後方支援対象の「武力行使」について適法であるとの法的担保がなされていない。
 さらには、後方地域支援の地理的限界を取り払い、米艦船等の防護を、武器等防護のための武器使用を広げて自衛官による警察権行使として可能にする(自衛隊法改正95条の2)が、そもそも自衛艦が攻撃されていないにもかかわらず、個別的自衛権の適用を拡大して米艦を防護することは国際法に適合した説明が困難とされ、国際法違反のおそれがあるとされている。この防護を、平時から海外での自衛官の任務に加えることは、不合理である。
 上記のとおり、安保関連法は、未だに正当性・合憲性に十分な説明が尽くされているとは言えない。
 この点を措いても、様々な不合理・欠陥が指摘されている。たとえば①重要影響事態安全確保法において、防衛大臣に自衛隊に対する安全配慮義務規定がない(ほぼ同様の業務を実施する国際平和支援法9条には規定がある)、②自衛隊法においては、武器不正使用についての国外犯処罰規定がない(自衛隊法118条1項4号)が、他国の武器等を防護する規定(自衛隊法95条の2等)で武器使用の主体を自衛官とした結果、武器不正使用を処罰できない矛盾が生じる、③国際平和支援法においては、「関係行政機関」の協力等を定めた条文があるのに、その定義規定がない(国際平和支援法2条6項、10条)などである。
 これらを含め安保関連法の不合理・欠陥については、更に国会審議で議論がなされるべきであるところ、政府は国会での丁寧な説明が必要であると言いながら、臨時国会を開催することなく、国会での説明を尽くさなかった。すなわち、憲法53条後段は、臨時国会の召集に関し、「いずれかの議院の総議員の4分の1以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない。」と定めているにもかかわらず、政府はその召集を決定しなかったのである。政府は、来年1月4日召集の通常国会の開催をもって、憲法53条後段の要請を充たすとしているようであるが、同条は、「召集のために必要な合理的な期間を超えない期間内に召集を行うこと」を要請しているのであり(2003年(平成15年)の内閣法制局長官の答弁)、召集の要求から2か月以上先の通常国会の召集がその要請を充たすとは考えられない。
 こうした政府の態度は、有識者及び世論の多数が違憲と判断した安保関連法を強行採決した憲法無視の姿勢と全く同根である。
 以上のとおりであるから、当弁護士会は、立憲主義、恒久平和主義及び国民主権を尊重する立場から、臨時国会を開催しなかったことについて遺憾であることを表明し、さらに通常国会において安保関連法の徹底審議を求める。

通常国会での安全保障関連法の徹底審議を求めるとともに 臨時国会を開催しなかったことを遺憾とする会長声明

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