消費者庁・国民生活センターの地方移転に反対する会長声明

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更新日:2016年01月08日

2016年(平成28年)1月8日
第二東京弁護士会 会長 三宅 弘
15(声)第21号

 現在、政府の「まち・ひと・しごと創生本部」「政府関係機関移転に関する有識者会議」(以下「有識者会議」という。)において、政府関係機関の地方移転の検討が行われており、その中で、徳島県からの提案を受け、消費者庁と国民生活センターの同県への移転が検討されている。
 政府関係機関の地方移転促進は、関連する民間事業者の地方展開を促す効果が期待できるなど地方活性化に資する政策としては、大いに評価できる。しかし、消費者庁及び国民生活センターについては、両機関が果たす機能から地方移転は不適当である。
 消費者庁は、従前、多数の省庁に分散して担われていた消費者行政を一元化し、消費者行政における司令塔的役割を果たすものとして創設された。消費者問題は多数の省庁が密接な連携を図って業務を遂行する必要があるところ、消費者庁が司令塔的役割を果たすためには、日常的に関係省庁等との間で直接協議を行うなど、中央省庁等と日常的に一体として業務を行うことが不可欠である。また、消費者の安全に関する重大事故の発生時には、消費者庁には、官邸及び中央省庁等と一体となり緊急対応を行うことが求められる。
 また、国民生活センターは、消費生活に関する情報の収集・提供、商品についての試験・検査等における中核的な機関であり、消費者庁と連携して諸問題を検討して関連省庁に意見を述べ、地方消費者行政を支援し、消費者・事業者・地方自治体・各省庁に情報提供を行う等の機能を有する。こうした機能を発揮するためには、消費者庁と同様、中央省庁等に近接し密接に連携できる場所にある必要がある。
 さらに、消費者庁・国民生活センターは、現在多くの任期付公務員、非常勤職員、審議会委員等により支えられているが、遠隔地に移転した場合、現状の勤務・協力体制を維持することは困難である。特に、国民生活センターはいわゆる「経由相談」により全国の消費者センターの窓口支援を担っているが、移転により専門的知識と経験が豊富な多くの非常勤職員が退職を余儀なくされ、全国の消費生活センターの機能低下という地方活性化の理念に反する事態を来すことも懸念される。
 有識者会議では、官邸と一体となり緊急対応を行う等政府の危機管理業務を担う機関や中央省庁と日常的に一体として業務を行う機関に係る提案や、移転した場合に機能の維持が極めて困難となる提案については、移転をさせない方向性が示されている。消費者庁、国民生活センターは、まさに地方移転をさせるべきでない機関に該当する。
 産業の発展と消費者の安全・安心は車の両輪であり、消費者庁・国民生活センターは中央において、より一層その機能を発揮することが望まれる。
 よって、当弁護士会は、消費者庁及び国民生活センターの地方移転について強く反対する。

消費者庁・国民生活センターの地方移転に反対する会長声明(PDF)

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