司法修習生に対する給付型の経済的支援を求める会長声明

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更新日:2016年01月20日

2016年(平成28年)1月20日
第二東京弁護士会 会長 三宅 弘
15(声)第22号

 司法修習生への給付型の経済的支援(修習手当の創設)については、これまでも日本弁護士連合会・各弁護士会に対して、与野党を問わず多くの国会議員から賛同のメッセージが寄せられてきた。これは、国会議員の間で、司法修習生への経済的支援の必要性について理解が深まってきたことの現れと考えられる。
 このような中で、先般、衆参両院の合計議員数717名の過半数に相当する359名を超えるメッセージを得るにいたった。
 まずはメッセージをお寄せいただいた国会議員の皆様に対し感謝の意と敬意を表するものである。
 そもそも、司法制度は、社会に法の支配を行き渡らせ、市民の権利を実現するために必要不可欠な社会的インフラである。そのため、我が国では、終戦直後から、公共的価値を実現する司法制度を担う法曹となる司法修習生は公費をもって養成するべきであるとの理念にもとづき司法修習生に対して給与を支給してきたが(給費制)、2011年11月からは、修習期間中に生活費等の援助が必要な修習生に対して、国が必要な金員を貸与する制度(貸与制)に変更された。
 しかし、司法修習生は原則として兼業を禁止されており、生活費を得る手段について制限を受けている。そのため、経済的に余裕のない司法修習生は貸与制による金員の借入れを選択せざるを得ない。
 その結果、司法修習生の中には、貸与制による借入金に加え、大学や法科大学院における奨学金の返済義務を負っている者も多く、その合計額が極めて多額に上る場合も少なくない。
 現在、法曹志望者は確実に減少している。法科大学院制度が施行される前の司法試験の受験者数は4万人を超えていたが、本年度の受験者はわずか8019名となっている。このように法曹志望者が激減した一因として、前記のような重い経済的負担の存在が指摘されている。
 法曹志望者の激減は、司法制度の弱体化を招き、社会全般に法の支配が及ぶことの障害となるだけでなく、市民の権利を実現するための社会的インフラが脆弱化し、ひいては市民の権利を十分に保護できないような事態を招来しかねない。
 こうした法曹志望者の激減という事実を重く受け止め、法曹として広く有為な人材を募るとともに、有為な人材が経済的理由によって法曹への道を断念する事態が生ずることのないよう、また、司法修習生が安心して修習に専念できる環境を整えるため、司法修習生に対する給付型の経済的支援(修習手当の創設)を早急に実施すべきである。
 2015年6月30日、政府の法曹養成制度改革推進会議が決定した「法曹養成制度改革の更なる推進について」において、「法務省は、最高裁判所等との連携・協力の下、司法修習の実態、司法修習終了後相当期間を経た法曹の収入等の経済状況、司法制度全体に対する合理的な財政負担の在り方等を踏まえ、司法修習生に対する経済的支援の在り方を検討するものとする。」との一節が盛り込まれたが、これは、司法修習生に対する経済的支援の実現に向けた大きな一歩と評価することができる。
 そこで、法務省、最高裁判所等の関係各機関は、有為な人材が安心して法曹を目指せるような希望を持てる制度とするという観点から、喫緊の課題として、司法修習生に対する経済的支援の実現に向けた前向きかつ具体的な検討を開始すべきである。
 当弁護士会は、司法修習生への給付型の経済的支援(修習手当の創設)に対し、国会議員の過半数が賛同のメッセージを寄せていること、及び、政府においても上記のような決定がなされたことを踏まえて、国会に対して、給付型の経済的支援(修習手当の創設)を内容とする裁判所法の改正を求めるものである。

司法修習生に対する給付型の経済的支援を求める会長声明(PDF)

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