死刑執行に抗議する会長声明

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更新日:2016年03月25日

2016年(平成28年)3月25日
第二東京弁護士会会長 三宅 弘
15(声)第25号

 本日、大阪拘置所において1名、福岡拘置所において1名、合計2名に対して死刑が執行された。岩城光英法務大臣による2度目の死刑執行である。執行されたうちの1名は、75歳の男性であり、もう1名は女性である。
 当弁護士会は、人権擁護委員会内に死刑廃止検討部会を設け、死刑についての連続シンポジウムを開催し、市民とともに、死刑廃止について議論を重ねていたところである。また、日本弁護士連合会は、岩城法務大臣に対し、「死刑制度の廃止について全社会的議論を開始し、死刑の執行を停止するとともに、死刑えん罪事件を未然に防ぐ措置を緊急に講じることを求める要請書」を提出して、死刑制度とその運用に関する情報を広く公開し、死刑制度に関する世界の情勢について調査の上、調査結果と議論に基づき、今後の死刑制度の在り方について結論を出すこと、そのような議論が尽くされるまでの間、すべての死刑の執行を停止すること等を求めていた。
 死刑の廃止は国際的な趨勢であり、世界で死刑を廃止又は停止している国は140か国に上っている。死刑を存置している国は58か国であるが、2014年に実際に死刑を執行した国は更に少なく、日本を含め22か国であった。いわゆる先進国グループであるOECD(経済協力開発機構)加盟国(34か国)の中で死刑制度を存置している国は、日本・韓国・米国の3か国のみであるが、韓国は17年以上にわたって死刑の執行を停止、米国の19州は死刑を廃止しており、死刑を国家として統一して執行しているのは日本のみである。こうした状況を受け、国際人権(自由権)規約委員会は、2014年、日本政府に対し、死刑の廃止について十分に考慮すること等を勧告している。
 これに対し、日本においては、袴田巖氏は2014年3月静岡地方裁判所において再審開始決定がなされ48年ぶりに釈放されたものの、いまだに東京高等裁判所で即時抗告審が行われている。また名張毒ぶどう酒事件の奥西勝氏は、2015年10月、再審請求中に89歳で死亡した。死刑判決から46年がたっている。これらの事件を通じ日本の刑事司法制度の様々な問題点が指摘されているが、誤判えん罪の危険性は現実的なものであり、誤って死刑を執行するおそれは否定できない。
 2014年に実施された死刑制度に関する政府の世論調査の結果、「死刑もやむを得ない」との回答が80.3%であったものの、そのうち40.5%は「将来的には、死刑を廃止してもよい」とした。また仮釈放のない終身刑が導入されるならば、「死刑を廃止する方がよい」37.7%、「死刑を廃止しない方がよい」51.5%と回答している。世論は悩み考えているのであり、この結果からも、死刑に関する情報は広く国民に公開されることを前提として、死刑廃止について議論する必要性があると言える。
 当弁護士会は、これまでの死刑執行に対して強く抗議してきたところであるが、今回の死刑執行に対しても強く抗議するとともに、改めて死刑執行を停止し、現在ではほとんど開示されないところの死刑に関する情報を広く国民に公開するとともに、死刑の代替刑としての仮釈放のない終身刑のあり方等についても説明責任を尽くしたうえで、終身刑の是非も含めた死刑制度の廃止についての全社会的議論を直ちに開始することを求めるものである。

死刑執行に抗議する会長声明(PDF)

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