死刑執行に抗議する会長声明

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更新日:2016年11月14日

2016年(平成28年)11月14日
第二東京弁護士会会長 早稲田 祐美子
16(声)第6号

 11月11日、福岡拘置所において、1名に対して死刑が執行された。この執行は金田勝年法務大臣就任後初めてであり、裁判員制度の下で死刑が確定し、執行された2例目である。
 日本弁護士連合会は、本年10月7日に開催された第59回人権擁護大会において、「死刑制度の廃止を含む刑罰制度全体の改革を求める宣言」を採択し、その中で、日本において世界各国から数千人の政府関係者・専門家・NGOが集まり世界の刑事司法制度の向かうべき方向性を議論する大規模な国際会議である、「国連犯罪防止刑事司法会議」が開催される2020年までに死刑制度の廃止を目指すべきであることを宣言した。
 確かに、犯罪により奪われた命は二度と戻ってこない。このような犯罪は決して許されるものではなく、犯罪により身内の方を亡くされた遺族の方が厳罰を望むことは、ごく自然な心情である。また犯罪被害者・遺族のための施策は未だ十分ではなく、これらの方々が必要な支援を途切れることなく受けることができるように支援することは、弁護士会を含む社会全体の責務である。
 他方、生まれながらの犯罪者はおらず、多くは、家庭、経済、教育、地域等における様々な環境や差別が一因となって犯罪に至っている。刑罰制度は、犯罪への応報であることにとどまらず、社会復帰の達成に資するものでなければならず、このような考え方は、再犯の防止に役立ち、社会全体の安全に資するものである。
 人権を尊重する民主主義社会であろうとする我々の社会においては、犯罪被害者・遺族に対する十分な支援を行うとともに、死刑制度を含む刑罰制度全体を見直す必要がある。死刑制度は、基本的人権の核をなす生命に対する権利を国が剥奪する制度であり、国家による重大かつ深刻な人権侵害であると言わざるを得ない。
 袴田事件の例を上げるまでもなく、刑事司法制度は人の作ったものであり、その運用も人が行う以上、誤判・えん罪の可能性そのものを否定することはできない。誤って死刑を執行した場合、取り返しがつかない。
 国際社会においては死刑廃止に向かう潮流が主流であり、死刑制度を残し、現実的に死刑を執行している国は、世界の中では少数に留まっている。わが国では、2014年に実施された死刑制度に関する政府の世論調査の結果、「死刑もやむを得ない」との回答が80.3%であったものの、そのうち40.5%は「将来的に死刑を廃止してもよい」とし、仮釈放のない終身刑が導入されるならば、「死刑を廃止する方がよい」37.5%と回答している。このように、死刑制度を巡って、世論は悩み考えているのであり、この点からも死刑制度の廃止を含む刑罰制度全体の改革を議論すべきである。
 当弁護士会は、これまでの死刑執行に対しても強く抗議してきたところであるが、今回の死刑執行に対し強く抗議するとともに、改めて死刑執行を停止し、2020年までに死刑制度の廃止を目指すべきであることを求めるものである。

死刑執行に抗議する会長声明(PDF)

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