ワークルール教育推進法(仮称)の制定を求める会長声明

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更新日:2017年12月22日

2017年(平成29年)12月22日
第二東京弁護士会 会長 伊東 卓
17(声)第9号

 来春卒業する大学生の就職内定率は10月時点で近年最高の水準となっており、労働力不足の中、失業率も低下の傾向にある。しかし、働く環境や労働の質は必ずしも改善されていない。不安定な非正規雇用の増加だけでなく、正規雇用を含めて過労死や過労自殺にまで至る長時間労働やサービス残業の横行、セクシュアル・ハラスメント、パワー・ハラスメントなど精神的肉体的苦痛を強いる職場環境等、様々な問題が指摘されている。
 何度も同種の問題がニュースで大きく取り上げられながら繰り返される背景には、日本では、学生や生徒たちに対して働く人々を守る法律や問題解決のための制度を教える機会がほとんどなく、労働契約の一方当事者として当然に持っている権利についての十分な知識がないままに社会人となる、という実情があることを見落としてはならない。

 2017年2月17日、日本弁護士連合会は、「ワークルール教育推進法(仮称)の制定を求める意見書」を採択し、「職業生活において必要な労働の分野に関する実体法及び手続法等(判例を含む)」である「ワークルール」に関する基礎的な知識を付与するとともに、職業生活において生ずる諸問題に適正に対処するために必要な分析力、交渉力及び問題解決力を育むワークルール教育の推進を図る法律の制定を提唱している。

 政府は、反対論もあるなか、今後「働き方改革」に関連して高度プロフェッショナル制度や裁量労働制等の導入を推進するとしているが、今まで以上に雇用形態の多様化が進み労働環境が変化すれば、働く人々自身が自らを守る知識を身に着ける必要性は、さらに大きくなる。この観点からも、社会に出る前の学生や生徒たちにワークルールすなわち「職業生活において必要な労働の分野に関する実体法及び手続法等」についての基礎的な知識を教育することは、時代の要請ともいえよう。

 初めて就職する大学生や生徒たちに、労働法や労働問題に対する対応方法等の基本的な知識を実際に役立つ形で教え、さらに次の世代である小中学生についても「働く」ことの意味を共に考え働く人が持つ権利をキャリア教育の観点から教えることは重要である。当弁護士会は、これまで、労働法教育の現場でこのように実践してきた。
 その経験に照らし、社会全体がこの問題に取り組み、より充実したワークルール教育を実現するためには、国・地方公共団体、教育委員会・学校等がそれぞれに役割を担い連携するワークルール教育推進法(仮称)が不可欠であると考え、同法の制定を強く求めるものである。

ワークルール教育推進法(仮称)の制定を求める会長声明

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