2017夏季ジュニアロースクール・イベントレポート

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更新日:2017年09月11日

1 はじめに

法教育の普及・推進に関する委員会(法教育委員会)は、平成29年8月8日、弁護士会館において「夏季ジュニアロースクール2017」を開催致しました。
ジュニアロースクールは、法教育委員会が普段行っている出前授業と同様、子ども達に法的なものの見方・考え方を身につけてもらうことを目的として、毎年実施しているアクティブ・ラーニング型の授業であり、今年で6回目の開催となりました。
そして、例年、中学生を対象として開催していたジュニアロースクールですが、今年は、新たに、小学生もその対象に加え、小学校の部・中学校の部の同時開催となりました。

2 小学生の部について

小学校の部のテーマは、「うさぎ当番のルール作り」でした。設定としては、ある小学校でうさぎ当番のルールを決め、みんなでうさぎのお世話をしていたが、様々な事情(部活が忙しい、うさぎアレルギーがある、うさぎがこわくて近寄れない、休日ばかりに当番が回ってくることに不満がある)により当番をさぼる人が出てしまい、うさぎが病気になってしまった、ということを前提として、それぞれの事情に配慮した上で、みんなが納得して関わっていける新しいルールを作ってみよう、という内容でした。
この授業の主な目的は、子ども達にとって身近なトラブルの事例を通じて、さまざまな立場から物事を見ることにより、ルールを守ることの重要性を学ぶという点にありますが、どの子ども達も、相手の立場に配慮した新たなルールを生み出そうと積極的に意見を述べ、活発な議論がなされました。例えば、動物のアレルギー反応を持っている子は、自分の経験に基づいて、うさぎの毛を吸わないような形での参加をしたいなどの意見が出たこともありました。
また、授業終了後の昼食タイムでは、子ども達と弁護士が一緒にお弁当を食べ、参加した子ども達と弁護士の交流をさらに深めることができ、弁護士にとっても普段の出前授業とは異なるよい体験ができました。

3 中学生の部について

中学生の部の午前の授業では、一つの架空事例として、ソレイユ国を統治(三権を支配)し国民から多大な支持を受けていた大統領が、文化的施策を優先するようになったことをきっかけに、急激な増税をしたり、「大統領のやることに反対してはならない」というルールを作るようになったという設定をし、子ども達には、ソレイユ国のどのような仕組みに問題があったのか、大統領はどのような権力を持っていたかを考えてもらうとともに、どのような仕組みを整えればよかったのかなどをグループで議論してもらいました。
この授業の目的は、一つの事例を通じて、(国家)権力が集中することの危険性、その危険性を除去するためには、権力を分散させ、相互にチェックする仕組みが必要であることを、具体的に理解してもらったうえで、その仕組みを定めたルールが憲法であること、その憲法が守ろうとしているのは国民の人権であることなどを学んでもらうという点にあります。
弁護士が事例の登場人物に仮装し、ストーリーを展開しながら、子ども達に意見を求めると、子ども達からは、議会を設けるべきであった、統治権を分ければよかったなど、上記目的に沿う意見が多数あがり、また、グループワークでも、活発に議論がなされました。
午後の部の授業では、「法律を作り、使ってみよう」というテーマのもと、午前の授業を踏まえて、子ども達に法律を作るという体験と、作った法律を事例に適用するという体験をしてもらいました。
いわゆる実名報道などを規制した少年法61条を題材に、現行法の制度趣旨、理念、対立利益に加えて、新聞協会の意見や旧少年法の規定を紹介するとともに、インターネットの普及による情報拡散、SNSによる投稿の容易さなど、現行法施行時には存在しなかった社会事情にも触れたうえで、子ども達には、誰に対して、どのような行為、内容について、規制すべきか、罰則を設けるべきか、例外を設けるべきかなどについて、ディスカッションし、グループごとに発表してもらい、また、作成した法律に事例を適用して妥当な結論が得られるかを検討してもらいました。
高校生を対象としてもよいほど、難易度の高い内容であったため、中学生でも対応できるかという懸念があったものの、自らの意見をきちんと持ち、その説明ができる子ども達が多く、グループ・ディスカッションでは、ティーチング・アシスタントの弁護士やロースクール生による進行のもと、異なる意見をもつ子ども達が主張・反論を展開する場面も見られるなど、活気ある議論がなされました。
また、自らのグループで作成した法律を事例に適用する場面では、子ども達は、全ての事例において、妥当な結論を得ることの難しさを感じつつ、さらにどのような工夫が必要であったかなどを考えていました。
憲法や立法について、子ども達に理解してもらうにあたっては、抽象的な説明を一方的に行うのみではなく、事例に基づいて主体的に議論に参加してもらうアクティブ・ラーニング型の授業を取り入れることが効果的であり、弁護士やロースクール生が多数参加するジュニアロースクールは、その授業に大変適していると感じました。

4 最後に

今回、参加した子ども達が、ジュニアロースクールで体験した法的なものの見方や考え方を今後の生活に役立て、将来、自由で公正な民主主義の担い手をとなってくれることを法教育委員会は願っています。

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