「第6回 がんばろう東北!復興応援ツアー」レポート

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更新日:2017年10月05日

互助会運営委員会 委員 栗林 武史

本年9月23日、24日に「第6回 がんばろう東北!復興応援ツアー」に、参加してきました。今回は、原発事故によって甚大な被害を被った地域(飯館村や二本松市)において、特に農業の復興状況を視察してきました。飯館村は、本年3月31日に(一部の地域を除いて)避難指示が解除され帰還可能になったとはいえ、除染作業の進んでない山林があったり、除染作業で出た汚染土壌がそこかしこに野積みされていたりするなど、まだまだ復興の途上にあるという状況でした。
最初に、「飯館村いちばん館」にて、渡邊とみ子さんの講演をお聞きしました。渡邊さんは、震災以前から飯館村オリジナルの野菜を世に出すべく取り組んでこられましたが、震災による原発事故のため飯舘村での生産を継続できない状況になりました。それでも、渡邊さんは諦めず、避難先で畑を借りて種を撒き、収穫を続けてこられました。現在も、飯館村オリジナルの野菜を世に出すべく、飯館村の畑で実証栽培を続けておられます。渡邊さんの「撒かない種には芽も出ないし、実もならない。これからも新たに心に撒いた種を育ての親として立派に花を咲かせて、刈取りできるように大切に育てていきたい」という言葉がとても印象的でした。昼食は、実際に渡邊さんが育てた野菜や飯館村特産の凍み餅等をいただきました。初めて味わう料理ばかりでしたが、美味しかったです。
午後からは、二本松市で農業を営む菅野瑞穂さんの講演をお聞きしました。菅野さんの「種を撒き、土地を耕すことによって、土の力がよみがえり、農産物にも放射性物質が移行しないことがわかってきた」というお話を聞いて、涙が出そうになりました。菅野さんは、震災から6年が経過して、「何を伝えていけば良いのか分からない」と悩むこともあるそうですが、「もっともっと感情的なこと、それぞれの福島を伝えていくという使命感をもって、今後も情報発信を続けていきたい」とおっしゃっていました。その後、放射線測定器や菅野さんの水田を見学して、ホテルに向かいました。
ホテルでは、二本松法律事務所の井上航先生から経験談をお聞きしました。福島浜通り地域において、帰還者が少なく地域が分断されていることや、自治体が抱える課題(固定資産税や所得税の減収、空き地や空き家の管理等)についてお話がありました。原発事故の賠償問題に関しては、「賠償金の支払いによって解決できない問題があるのではないか」といった問題意識が示され、弁護士として、経済的支援以外の支援の必要性を感じておられるとのことでした。井上先生の「弁護士会が、震災復興に継続的な関心を持ち、国や自治体に対して、福祉分野を含む総合的な復興支援策を積極的に提案して欲しい」という言葉から、地域の方々の現実的な生活にまで支援が行き届いていない現状を確認することができました。
今回は、農業の復興状況の視察が中心でしたが、放射能汚染という目に見えない被害に立ち向かう方々の現状を知ることができ、改めて震災被害の甚大さを思い知らされました。井上先生の言葉にもあるように、震災を風化させることのないよう、継続的な関心を持つことが肝要なのだと痛感させられる視察旅行でした。

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