成年被後見人の財産の信託について -「後見制度支援信託」とは-
●成年被後見人(本人)の財産を信託する、とは?
東京家庭裁判所は、成年後見事件において、本人の財産のうち、現金・預貯金などの流動資産が一定額以上ある場合に、その一部を預貯金として親族後見人が管理し、そのほかの通常使用しない金銭を信託銀行等に信託して、それを払い戻すときは裁判所の指示書を必要とする仕組みの利用を進めています。
これを「後見制度支援信託」といいます。
具体的には、親族後見人は、年金の受取りや生活費の支払など日常的な金銭を管理し、通常は使用しない金銭は信託銀行等に預けて信託財産として運用されることになります。運用は元本補てん特約が付されますので、元本割れすることはありません。
本人に収入がない場合または医療費などの臨時支出が必要になった場合などには、裁判所の指示書に基づき、信託財産から定期的または一時的に金銭が交付されます。
●どういう事案が対象になるの?
東京家庭裁判所の現在の運用では、本人の流動資産が500万円以上ある事案が対象です。
●信託するかどうかは、誰が判断するの?
対象事案では、後見開始決定時、親族後見人の選任に先立って(または同時に)、弁護士・司法書士等の専門職後見人が選任され、その専門職後見人が「本件が後見制度支援信託の利用に適しているか」を判断して裁判所に報告書を出します。
この報告書を受け、裁判所が、最終的に利用に適していると判断した場合は、専門職後見人が信託契約締結等の手続を行ないます。
専門職後見人に対しては、本人の財産から報酬を支払うことになります。
●親族後見人の意見は聞いてもらえるの?
親族後見人が利用を希望しない場合は、裁判所は無理に信託の手続を進めることはしません。本人の財産保護のための他の方法として、裁判所が「後見監督人」を選任することもあります。後見監督人とは、後見人の行なう事務を監督する役割で、親族後見人の相談や報告を受けます。
親族後見人自身が多額の財産を継続的に管理するのは、判断に悩んだり負担が重いと感じたりする場合もあります。
また、他の親族との関係で、信託利用により多額の支出は裁判所の指示書に基づいて行うと説明できることや、後見監督人がいるということで、納得が得られやすくトラブルが避けられる場合もありますので、裁判所や専門職後見人と率直に協議してみてください。
【裁判所パンフレット 後見制度において利用する信託の概要】