コラム

遺言の種類について

 「遺言」について、皆さんはどのようなイメージをお持ちでしょうか。「兄弟仲良く」といったお気持ちを遺すもの、財産の分け方を指示するもの、色々な遺言があります。ここでは、法律上有効と認められるような遺言を残す方法(遺言書の種類)についてご説明したいと思います。なお、ここでは一般的なものだけを取り上げます。

 「自筆証書遺言」は、①全文、②作成した日付、③作成者の名前を直筆で書き、捺印するという方法によるものです(民法968条)。なお、ご夫婦など複数の方が遺言を作成したい場合でも、連名で1通作成するのではなく、各々お一人について1通ずつ作成する必要があります(民法975条)。

 自筆証書遺言は、費用もかからず簡単に作成できます。ただ、加筆や削除、訂正は厳格な方法で行わなければならないとされているため(民法968条2項)、この方法で遺言書を作成する場合には充分な注意が必要です。また、本当にご本人の直筆なのか、改ざんがなかったかなどが問題になりやすく、紛失や破棄、隠されたりする危険もあります。自筆証書遺言を見つけた人は、家庭裁判所で「検認」という手続をとってもらう必要があります(民法1004条)。

 次に「公正証書遺言」は、公証人の作成する公正証書によって行う遺言です(民法969条)。一般的には公証役場に行って依頼しますが、場合によっては公証人にご自宅や病院に来てもらうこともできます。

 この方法は、公証人が作成して保管するので自筆証書遺言のようなデメリットがありません(「検認」という手続も不要です)。ただ、証人2名の立会いが必要となります(公証役場で紹介してもらうこともできます)。また、公正証書作成のための手数料がかかります。

 最後に、「秘密証書遺言」という方法があります(民法970条)。この方法は、内容を秘密にしておきたい場合に検討することになります。この方法を選ぶ場合、本文は直筆でなくてもよいのですが、作成者の署名捺印(民法970条1項1号)のほか、作成者が封をして同じ印鑑で封印をし(同項2号)、公証人に封書を提出して手続を行う必要があり、この場合も証人2名や手数料の支払いが必要です。

 どの方法で遺言書を作成する場合でも、何を書くか、どういう表現で書くかということを事前によく考えておかないと、法的には一応有効でも不充分だったり曖昧だったりして、作成者のお考えが充分に反映されない遺言書になってしまうことがあります。遺言書は最も新しいものが有効とされますので、一度作成していても新たに作成し直すことができます。遺言書の作成に不安や疑問がおありの場合、ぜひ弁護士にご相談ください。