コラム

自筆証書遺言について

 遺言は、遺言者ご自身がお亡くなりになった後の法律関係を定める、人生最後の意思表示です。遺言(遺言書)の作成方法は複数ありますが、ここでは自筆証書遺言についてご説明します。

 自筆証書遺言は、遺言を行う方が遺言書の全文、日付及び氏名を自分で書き(自書)、押印して作成する方式の遺言です(民法9681項)。自筆であってもコピーしたものは自書とは認められませんし、パソコン等で全文を印刷し署名部分だけを自署したものは、自筆証書遺言の方式要件を欠くことになりますので注意が必要です。

 また、加除訂正も可能ですが、遺言者がその場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に押印しなければ効力はありません(同条2)

 自筆証書遺言作成のメリットとして、①誰にも知られずに遺言書を作成することができる、②遺言書の内容だけではなくその存在自体を隠しておくことができる、③費用をあまりかけなくても作成できる、といった点が挙げられます。その一方で、デメリットとして、①遺言書が発見されない可能性がある、②遺言書の紛失や他人による偽造・変造・隠匿・破棄の危険性が他の方式よりも高い、③家庭裁判所による検認手続が必要とされる(民法10041)、④方式不備で無効とされる危険性がある(とりわけ、加除訂正している場合にはその危険性が高い)、⑤全文を自書しなければならないため視覚に障害をお持ちの方には利用しづらい、といった点が挙げられます。

 また、遺言者名義の預金が凍結されたとき、自筆証書遺言だけでは金融機関が名義変更や払戻しに応じてくれないケースがありますが、これは他人による偽造・変造の危険性が他の方式よりも高く、後に争いとなる場合のあることが理由と考えられます。

 自筆証書遺言を封印する必要はありませんが、封印のある遺言書は、家庭裁判所において相続人又はその代理人の立会いがなければ、開封することができません(同条3項)。家庭裁判所外で開封した場合は、5万円以下の過料に処されますのでご注意ください(民法1005条)。もし、封印された遺言書を見つけたときは、その場では決して開封せず、家庭裁判所に遺言検認手続を申立てるべきです。

 検認とは、遺言書の原状を保全する手続きですから、検認を受けたかどうかは遺言の効力とは関係がありません。つまり、検認を受けたからといって遺言の有効性が確認されたことにはなりません。

 自筆証書遺言を作成される場合には、以上の点にご注意ください。なお、ご自身で作成された自筆証書遺言に方式不備がないかを確認したい、遺言検認の申立手続がわからない、という方は、弁護士会の法律相談にてご相談を承ることができますのでご利用ください。