コラム

成年後見制度ってなに?

「成年後見」と聞いてピンとくる方もいれば、はて?という方もいるかと思います。高齢社会の進行に従ってますます重要性を増しているといわれる成年後見制度について、このコラムでは制度の概要についてごく簡単に紹介します。

○成年後見制度とは

 自分の財産は自分の判断で自由に処分できる、これが現代法の大原則ですし、皆さんにとっても当然の常識だと思います。

 しかし、知的障害や認知症、精神障害などにより、物事を判断する能力が十分でない方についてもこの原則を貫いてしまうと、本人にとても大きな不利益が発生するおそれがあります。

 そこで民法は、そのような正常な判断能力を失ってしまった方を保護するために、本人に代わって適正に財産を管理するとともに、介護施設等と契約を結ぶなどして本人を看護する援助者(=成年後見人等)を家庭裁判所が選任できる制度を用意しました。これが成年後見制度です。

○成年後見制度を利用すると何が変わるの?

 成年後見人が選任されると、成年後見人が本人の利益のために介護サービスなどの契約を締結したり、本人がしてしまった契約を取り消すことができるようになります。例えば、本人が不用な高価品を購入してしまったとしても取り消すことができ、無用な財産の流出を防ぐことが期待できます。

 このようにして、本人の財産が適切に保護されるとともに、適切な身上看護がされることになります。

○成年後見人は何をするの?

 裁判所によって選任された成年後見人は、本人のために、①身上に関する事務と②財産に関する事務を行います。

 ①身上に関する事務とは、本人の住居や医療の確保、施設の入退所、介護・生活維持の事務など多種多様なものを含みます。もっとも、成年後見人が自ら介護等をしなければならないわけではなく、本人が介護等を適切に受けることができるように配慮すること、具体的には介護施設等と契約することなどがその内容となります。

 ②財産に関する事務とは、本人のために適切に財産を管理し、必要に応じて処分することです。上の例でいえば、介護施設等への支払いのために本人の預金を使って支払うことが、この財産に関する事務に入ります。

 もちろん、成年後見人が好き勝手に本人の財産を処分してよいわけではありませんし、とくに重要な財産(例:不動産)を処分する場合等には裁判所の許可を得る必要もあります。

○成年後見人になるのはだれ?

 裁判所が選任、などと聞くと「弁護士などの専門家しかなれないのでは?」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、裁判所の統計によれば、近親者が成年後見人に選任される例が約3割程度あるようです。本人のことをこれまで身近に見てきた人だからこそ、その人が財産を管理するとともに本人の看護をすることが本人にとっても望ましいとも考えられます。

 もっとも、いろいろな難しい問題があり、近親者ではなく弁護士等の専門家が選任される例もあります。

○成年後見制度を利用するために必要な手続き

 成年後見人が選任されるためには、家庭裁判所に対して、成年後見開始の審判を申し立てなければなりません。申し立てることができる人は、本人、配偶者、4親等以内の親族、検察官、市町村長等に限られています(民法7条ご参照)。

 申立てのための書式や必要書類等については、東京家庭裁判所の後見サイト(http://www.courts.go.jp/tokyo-f/saiban/koken/)に記載されていますので、ぜひご覧ください。また、手続き等についてご不明な点があれば、お近くの弁護士へもお気軽にご相談ください。