コラム

公正証書遺言について

 今回は、公正(こうせい)証書(しょうしょ)遺言(いごん)について解説します。公正証書遺言とは、遺言者が口頭で述べた内容について、2人以上の証人の立会いのもとで、公証人が書面にして作成する遺言書です。

 公証人は、裁判官・検察官・弁護士・法務局長などを長年経験した人の中から法務大臣が任命する法律の専門家で、公証役場において公正証書の作成などの事務を行います。

公正証書遺言の作成について

 実務においては、通常、遺言者やその依頼を受けた弁護士などが遺言の下書きを書いて公証役場(都内に45か所ほどあります)に持参し、これに基づいて公証人が遺言書を作成し、遺言者と2人以上の証人に読み聞かせた上で遺言者と証人が署名・押印します。

 以上の方法で作成された原本は公証役場に保管され、これと同じ内容の正本と謄本(とうほん)が一通ずつ作成され、遺言者に渡されます。

 なお、口がきけない人や耳が聞こえない人も、手話通訳などの方法によって公正証書遺言をすることができます。

公正証書遺言のメリット

 公正証書遺言は、専門家である公証人が作成するものですので、遺言書が方式の不備で無効となったり、内容の解釈をめぐってトラブルが起きたりするリスクが少ないことがメリットです。

 また、遺言書の原本は公証役場に保管されますので、紛失・改ざんのおそれはありません。遺言書の謄本を再発行してもらうこともできます。

 さらに、公正証書遺言は、他の種類の遺言とは異なり、検認(けんにん)手続(家庭裁判所において遺言内容を確認する手続)を行わずに遺言の内容を実行できるので、遺言者が亡くなった後に、直ちに相続の手続をとることができます。

公正証書遺言のデメリットなど

 このように多くのメリットがある公正証書遺言ですが、作成するにあたっては2人以上の証人の立会いが必要とされているなど、手続が面倒であり、また公証人に決められた手数料を支払う必要があることがデメリットといえます。

公証人に支払う手数料の額は、遺言書に書く財産の合計額や、財産を分配する人数、遺言書の枚数などを基準として決まります。たとえば、5000万円の財産を2人に2500万円ずつ分配する遺言を作成する場合の手数料は6万円程度となります。手数料の詳細については、お近くの公証役場にお問い合わせください。

 なお、証人については、知り合いに依頼することもできますし、事前に公証役場に相談すれば、証人となってくれる人を手配してくれます(報酬の支払いが必要です)。

 また、遺言者の方が病気で公証役場へ行けない場合などには、公証人に自宅や病院などに出張してもらって遺言書を作成してもらうことも可能です(出張日当などが必要です)。

 緊急に遺言をする必要がある場合には、まず自筆証書遺言(2017年3月13日付の当ページコラムをご参照ください)を作成し、その後に万全を期すために公正証書遺言を作成することを考えてもよいでしょう。