コラム

法定後見と任意後見

 成年後見制度には、法定後見と任意後見の2種類があります。この二つのどちらを利用するかは、本人の状況によって決まることになります。

 任意後見制度を利用するためには、本人に判断能力があるうちに、公正証書を作成する方法により受任者との間で任意後見契約を締結し、将来受任者に行わせる財産管理、身上監護の内容、代理権の範囲及び報酬の額などを決めておく必要があります。この任意後見契約は、本人の判断能力が不十分な状況になったときに、受任者(または本人、配偶者、四親等内の親族)が任意後見監督人の選任を家庭裁判所に申し立て、任意後見監督人が選任された時点から効力を生じます。任意後見監督人は、本人に代わって受任者(任意後見人)を監督し、裁判所は、任意後見監督人に対する監督を通じて、間接的に任意後見人を監督することになります。

 このように、任意後見制度では、

  1. 本人が自分の後見人を自ら選ぶことができる。

  2. 後見人が行うべきサービスを自分で決めることができる。

というメリットがあります。

 他方で、公正証書で任意後見契約を締結する必要があること、本人の判断能力が不十分となってからではこの制度を選択することはできない、という点に注意が必要です。なお、任意後見契約の発効までは、本人が受任者に財産管理を委託する財産管理契約を締結することが多く行われており、第二東京弁護士会では、見守りや財産管理を受託者が行うホームロイヤー契約を用意しています。

(ご参考) コラム「ホームロイヤーを利用してみませんか?」

http://niben.jp/soudan/service/management/column/entry/post_28.html

 法定後見制度は、本人が物事を判断する能力が不十分になってから、本人、配偶者、四親等内の親族、検察官、市町村長などの申立により、家庭裁判所が成年後見人や後見監督人を選任する制度です。本人や親族が希望する人を成年後見人候補者として申立書に記載しても、裁判所は候補者が適任であるかどうかを審理し、候補者以外の人を成年後見人に選任することがあります。成年後見人は、本人の心身の状態や生活状況に配慮しながら、財産を適正に管理し、必要な代理行為を行っていきます。後見監督人が選任された場合は、成年後見人は後見監督人に対して職務の内容を報告し、裁判所は通常は後見監督人に対する監督を通じて成年後見人を監督しますが、任意後見とは異なり、裁判所はいつでも直接に成年後見人に対して後見事務の報告や財産目録の提出を求めたり、必要な処分を命ずることができます。