コラム

後見人等の報酬はどれくらいかかる?

 高齢者や障がい者の方について成年後見等の審判を家庭裁判所に申し立てるかどうかのご相談の際,「家庭裁判所が弁護士さんを成年後見人に選任した場合,どの程度の報酬が発生するのですか」と聞かれることがあります。また,親族が成年後見人に選任される場合でも,弁護士が「監督人」に選任されることがあり,この場合の報酬についても質問されることがあります。

 成年後見人等の報酬は,後払い方式とされており,後見事務が始まってから1年強を経過した時点で,家庭裁判所の裁判官が,後見人等からの申立てを受け,それまでの後見等の事務内容(財産管理,身上監護)や,管理財産の規模・内容等を総合考慮して,裁量により,各事案における適正妥当な金額を算定して審判を行う,とされています。

 その後も,1年が経過するごとに,裁判官が後払い方式で報酬を算定し,審判を行います。成年後見人等は,家庭裁判所の審判で認められた金額について,ご本人の財産から支払を受けます。

 しかし,上記の説明だけでは金額の予測が困難ですので,東京家庭裁判所・同立川支部では,平成25年1月1日付けで「成年後見人等の報酬額のめやす」を公表しています。その内容を要約すると,次の表のようになります。

 通常の後見事務・監督事務を行った場合に「基本報酬」(月額×対象期間の月数)が認められ,さらに特別困難な事情があったり,訴訟・調停・不動産売却等の特別な行為をした場合に「付加報酬」が付加される,という考え方で算定されます。

 また,「管理財産額」は,預貯金及び上場株式・投資信託等の流動資産の合計額を指し,不動産の評価額や保険契約の評価額は算入しません。

成年後見人の基本報酬 *保佐人,補助人も同様

月額

管理財産額

1000万円以下

2万円

1000万円~5000万円

3~4万円

5000万円超

5~6万円

成年後見監督人の基本報酬 

 *補佐監督人,補助監督人,任意後見監督人も同様

管理財産額

5000万円以下

1~2万円

5000万円超

2.5~3万円

成年後見人・監督人等の付加報酬

身上監護等に特別困難な事情があった場合

基本報酬額の50%の範囲内で相当額の報酬を付加

特別の行為(訴訟,調停,遺産分割,不動産の任意売却,不動産の賃貸管理等)をした場合

相当額の報酬を付加

  専門職の後見人が複数ついている場合(例えば,弁護士が財産管理を分掌し,社会福祉士が身上監護を分掌するような場合)には,上記の基本報酬および付加報酬額を,分掌事務の内容に応じて適宜の割合で按分します。

  また,専門職の後見人に専門職の監督人が付いているケースでは,上記の後見人の報酬基準と監督人の報酬基準が別個に算定されることにはならず,上記の後見人の報酬基準による報酬を総額として,それを適宜の割合で按分することになります。

 

  なお,報酬を受けられるのは専門職の場合だけではありません。親族の成年後見人等も,家庭裁判所に「報酬付与審判の申立て」(書式は「後見サイト」に掲載されています)をすることで,報酬を受けることができます。報酬額は,専門職の場合に比べると低くなることが多いですが,一定の報酬を受けることが可能です。