コラム

金融機関にとっての任意後見・ホームロイヤー

 高齢化の波は金融機関の窓口にも押し寄せていると思われます。個人顧客の年齢層が徐々に高くなるのは当然として、一方で高齢者層に財産が偏在するために、高齢者こそが投資信託、生命保険等の投資商品の主要販売先になり、アパートローン等の貸付金営業の対象にもなっているでしょう。インターネットバンキングが普及するなか、窓口においでになるお客様はもっぱら高齢者かもしれません。

 その時に注意しなければいけないのは、お客様が判断能力をきちんと備えているかの判断でしょう。

 いわゆるオレオレ詐欺については、判断能力を全く失った高齢者ではなく、少しずつ判断能力が衰えた高齢者が被害者になることが多いと思われます。こうした事実に対して、窓口では、多額の現金を引出しに来た高齢者にさまざまな確認をして、詐欺被害に遭わないように保護することが期待されているでしょう。しかし、お客様は預金者で払出し権利者であることは明らかですから、払出しを渋ることになる行為は、お客様へのサービスとしては問題になりえます。また、そうしたある意味余計なおせっかいをするか否かは、銀行の内規なり法律なりによって裏付けられたものとまではいいがたく、窓口担当者の機転によるところが多いと思います。

 さらにすすんで、お客様は判断能力がないとの疑いを窓口が持てば、その場では払出しに応じず、法定後見人の選任等の依頼をするのでしょう。

 ローンの現場では、貸出実行後に借入人であるお客様の判断能力がなくなると、事後の管理や条件変更等の交渉に支障をきたすことが考えられます。

 いずれにせよ、高齢者であるお客様の判断能力が衰えた場面で、金融機関として何をどうするのかは難しい問題であり、かつリスクがありコストのかかる話です。

 そうなる前に、すなわち高齢者が判断能力を失う前に、予防的にその手当てを始めようというのが、任意後見であり、さらにその準備を含むサービスであるホームロイヤーです。近々認知症患者は700万人、800万人になるともいわれるなか、弁護士をはじめとする専門職後見人が足りなくなることは目に見えています。また、法定後見は家庭裁判所が主催するいわば官製のサービスですが、家庭裁判所スタッフの手も足りなくなるのは十分予想されます。この点からも、早いうちから高齢者の判断能力の衰えをカバーする専門職を、自らの意思で手当てすることをお客様にすすめることは、金融機関にとっても大事なサービスの一環ともいえるのではないでしょうか。特に、ホームロイヤーについては、第二東京弁護士会が任務に当たる弁護士を指導・支援する制度商品ですから、お客様に安心してお勧めできるのではないかと思われます。

(ご参考)コラム「ホームロイヤーを利用してみませんか」

http://niben.jp/soudan/service/management/column/entry/post_28.html