コラム

障害者刑事弁護について

 東京では、精神障害(認知症を含みます)や知的障害など、何らかの障害のある方の刑事弁護については、障害等に関する研修を受けた弁護士が当番弁護や国選弁護にあたるようにしています(「障害者刑事弁護」といいます)。というのも、コミュニケーションや環境調整など、障害の特性に配慮した対応が必要となることが多いためです。

 例えば、軽い知的障害や発達障害の人は一見普通に会話できているように見えるため、障害が見逃され、警察官や検察官に誘導されるがまま、事実と異なる自白調書(「自分がやりました」と罪を認める書面)が作られていることがよくあります。そして、起訴されてしまい、裁判で自白調書が重要な証拠の一つとして扱われ、有罪判決が出てしまうケースも少なくありません。

 弁護人がついていれば、事実と異なる自白調書が作られるのを未然に防ぐことや、裁判で、自白調書の内容は事実と異なると主張することによって、有罪判決を回避できる場合があります。

 障害特性のゆえに犯罪に及んでしまった場合、責任能力がないと判断され無罪とされることはあまり多くありません。起訴されるとどうしても有罪になってしまいますし、繰り返し犯罪に及んでしまうと、執行猶予がつかず刑務所に収容されざるを得ない状況に陥ります。

 そのため、障害がある方が逮捕された場合には、犯罪に及ばずに生活していけるよう早急に環境を整えることが重要となります。グループホームや相談支援事業所などの支援者がいれば大至急集まってもらい、服薬管理や見守りなどの対応策を立てます。そもそも支援者がいない場合は、社会福祉士や精神保健福祉士等の福祉専門家の協力を仰いで、福祉施設や福祉サービスを探してもらい、更生支援計画を立てることもあります。

 このように、障害者刑事弁護では、障害特性に応じた知識や活動が必要となります。障害のある方が逮捕された場合には、それに対応できる弁護士が派遣されるよう、当番弁護要請の際に障害がある(あるいはその疑いがある)ことを伝えてください。ご家族や支援者の方も当番弁護を要請することが可能です。こちらの番号へお電話ください。

刑事弁護センター 03-3580-0082