コラム

後見等申立時の診断書・本人情報シートについて

成年後見制度利用促進基本計画を踏まえた議論をもとに、平成31年4月1日以降、後見等申立てに使用される診断書の書式が全国の家庭裁判所で統一的に変更されました。この際、併せて、より的確な診断に資するように福祉関係者が本人の日常や生活状況等を医師に伝えるための「本人情報シート」が導入されました。

後見等申立用の診断書と本人情報シートに関する留意点は、以下のとおりです。

○診断書について

・裁判所のホームページ(https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_09_02/index.html)に診断書の書式や診断書作成の手引きなどが載っています。診断書は、この裁判所の書式で作成してもらうようにしてください。また、同ホームページには、医師向けの診断書作成のためのガイドラインなども掲載されていますので、適宜、診断書を作成する医師に参照してもらうとよいと思われます。

・診断書の作成は、できるだけ本人を定期的に診察している主治医(かかりつけ医)に依頼しましょう。診断書の作成者は、精神科医以外の内科医などでも構いませんが、診断名には、判断能力に影響する病名(民法上の要件である「精神上の障害」に該当する病名)を明記してもらうようにしてください。

・医師に診断書作成を依頼する際には、後述の「本人情報シート」を提供することが望ましいですが、「本人情報シート」の提供は必須ではありません。

・診断書の作成には、2~4週間程度かかると言われることが多いです。そのため、後見等申立てを行う可能性があるときには、早めに診断書作成を依頼しておくとよいです。ただし、後見等申立てをする際には、作成日から3か月以内の診断書の添付を求められるため、診断書が作成された後は速やかに申立てを進める必要があります。

・各地の家庭裁判所ごとに後見等申立時に提出を求める資料を追加できることとされており、東京家庭裁判所においては、診断書に加えて、鑑定となった場合の鑑定医の引受けの可否等について記載する「診断書付票」の提出も求められていますので、東京家庭裁判所に後見等申立てをする際にはご注意ください。診断書付票の書式は、東京家庭裁判所の後見サイトにてダウンロードできます(https://www.courts.go.jp/tokyo-f/vc-files/tokyo-f/kouken/1118R0310.docx)。

○本人情報シートについて

・診断書を作成する医師が本人の判断能力等について判断するにあたって本人の日常及び社会生活に関する客観的情報を提供するための補助資料として、本人の支援をしている福祉関係者(ソーシャルワーカーとして本人の支援に関わっている方や地域包括支援センター、権利擁護支援センターの職員など)に作成してもらいます。

・本人情報シートは、診断書を作成する医師にまず提供し、その後、後見等申立ての際には家庭裁判所にも提出することになります。

・上述のとおり、本人情報シートは後見等申立てにおいて必須の書類ではありませんが、近時は東京家庭裁判所になされている後見等申立てのうち8割程度について本人情報シートが提出されているとのことです。後見等業務の遂行にあたって本人情報シートの記載は大いに参考になるため、可能な限り本人情報シートを取り付けることが望ましいといえます。福祉関係者の協力が得られない等でどうしても本人情報シートを作成してもらえないときには、本人情報シートの提供をせずに医師に診断書を作成してもらい、本人情報シートを添付せずに後見等申立を行うことができます。

・本人情報シートの書式も、診断書と同じく裁判所のホームページ(https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_09_02/index.html)からダウンロードすることができます。同ホームページには、本人情報シートの記載ガイドライン等も掲載されており、記載項目ごとの記載内容の留意点やモデル事例における記載例などを確認することができます。作成を依頼する福祉関係者には、同ガイドライン等を適宜参照してもらうようにしてください。