コラム

相続登記の申請の義務化

 相続人が亡くなった方の所有名義の不動産を相続で取得した場合、これまでは相続登記の申請をするかどうかは相続人の意思に任されていました。しかし、今回の法改正により令和6年4月1日からは、相続登記の申請が義務化されることになりました。具体的には、相続による所有権の取得を知った日から(遺産分割が成立した場合は遺産分割が成立した日から)3年以内に相続登記の申請をしなければならないこととされました。

 この相続登記の申請の義務化について、注意すべき点は2点あります。

 1点目は、令和6年4月1日より前に相続が発生していたとしても、今回の法改正が適用されるという点です。相続人は、相続による所有権の取得を知った日又は令和6年4月1日のいずれか遅い日から3年以内に相続登記を申請する義務があります(すなわち、少なくとも令和6年4月1日から3年間は猶予が与えられます)。そのため、令和6年4月1日よりも前に相続が発生した場合も、相続人は相続登記の申請が漏れていないか確認する必要があります。

 2点目は、相続登記の申請を、「正当な理由」なく怠った場合、10万円以下の過料が課されるという点です。相続人が極めて多数に上り、相続登記の申請が容易ではない場合や相続人間で紛争が生じている場合などは、「正当な理由」があると考えられています。しかし、そのような事情がないにもかかわらず、相続登記の申請を怠った場合には、過料が課される可能性がありますので、注意が必要です。

 相続登記の申請が義務化されたのは、「所有者不明土地」の発生を予防するためです。「所有者不明土地」とは、不動産登記簿により真の所有者が直ちに判明せず、または、判明しても連絡がとれない土地をいいます。このような「所有者不明土地」の面積は、国土の約22%に上り、九州全土の面積を上回ります。そして、国土交通省の調査によれば、「所有者不明土地」の発生原因は、相続登記の未了が全体の約3分の2を占めています。「所有者不明土地」が増加すると、民間の土地開発や地方公共団体による公共事業のための用地取得等に支障が生じるため、その予防策として相続登記の申請が義務化されました。詳細は、下記のページをご覧ください。

〇法務省 所有者不明土地の解消に向けた民事基本法制の見直し

https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00343.html