コラム

高齢者を狙った自宅の「押し買い(訪問購入)」被害

 一人暮らしの高齢者を狙った自宅の「押し買い(訪問購入)」被害が増えています。「押し買い」とは、買取相談・査定相談を受けていないにもかかわらず、不動産業者(以下「業者」といいます。)が自宅へ訪問して強引に買い取ることをいいます。全国の消費生活センターには、60歳以上の高齢者の自宅売却に関する相談が2018年から年間600件以上も寄せられています。

 以下のような被害事例が報告されています。

1 強引な勧誘で契約させられ、解約に高額な解約金を請求されたケース

 80代の女性が、自宅マンションの売却をしつこく持ちかけられ、仲介により550万円で売却する契約をした。買主から50万円の手付金が支払われ、仲介手数料を控除した40万円を受け取ったが、引っ越しが難しいと思い、キャンセルしたいと連絡したところ、「手付金50万円の倍額と手数料を合わせた約115万円を支払うように」と言われた。解約の際の説明は受けていない。高齢のため賃貸物件を借りられず、困っている。

2 著しく低額な代金で売却し、賃貸借契約をさせられたケース

 年金が唯一の収入である高齢の男性が、業者から自宅の売却の勧誘を受け、「住む場所がなくなる」と断っていたところ、「売却後も住み続けられます」と勧誘され、業者に提示された700万円で自宅を売却し、月15万円で賃借するリースバック契約を結んだ。後日、自宅の取引価格は1億2千万円相当であるにも関わらず、十分な説明もなく、著しく低額な売買代金設定がなされていたことが判明した。

※リースバックとは、住宅を売却して現金を得て、売却後は毎月賃料を払うことで、今まで住んでいた住宅に引き続き住むというサービスです。

「住宅のリースバックに関するガイドブック」国土交通省

https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001487923.pdf

 自宅を不動産業者に売却した場合、宅地建物取引業法や特定商取引法に定めるクーリング・オフ(無条件で契約を解除すること)ができません。契約をやめる(解除)には、高額な違約金が必要となる場合も多いです。また、不利な賃貸借契約を結ばされ、賃料が高額であったり、再契約を拒否されたりして、退去せざるを得ないといった被害も出ています。

 勧誘が迷惑だと思ったらきっぱり断ることが大切です。また、よく分からないことや納得できないことがあったら、解決するまで契約はしないようにすることが重要です。自分で断りにくい場合には「友人に相談してから決める」と言って一旦帰ってもらうという対応も考えられます。業者とトラブルになった場合には、消費生活センターや弁護士にできるだけ早く相談してください。

 当会でも、高齢者の不動産押し買い(訪問購入)・買取被害について取り組んでいます。不動産押し買い(訪問購入)・買取被害について、相談・依頼されたい場合、以下までご連絡ください。

 【お問合せ先】

  第二東京弁護士会事務局人権課 消費者問題対策委員会担当

  電話番号:03-3581-2257

 なお、高齢者等を狙った消費者被害は、本人でも気が付かない場合が多く、ケアマネジャー(介護支援専門員)やヘルパーといった福祉事業者によって発覚することが多いと言われています。

 当会を含む東京の3つの弁護士会では、高齢者等の消費者被害に関する相談を、福祉事業者から受け付ける電話・出張相談を行っています。

 どうぞ、高齢者や障がい者の方がトラブルに巻き込まれているのではと少しでも気にかかることがある場合は、お気軽にご連絡ください。

 【高齢者・障がい者の消費者被害についての電話・出張相談】

  チラシ https://niben.jp/news/news_pdf/oshirase20220609-2.pdf

  高齢者・障がい者の消費者被害についての電話相談申込書https://niben.jp/news/news_pdf/oshirase20220609-1.pdf