コラム

この子らを世の光に

 みなさんは「この子らを世の光に」という糸賀一雄の言葉をご存知でしょうか。糸賀一雄は、知的障がい児や戦争孤児のための「近江学園」や重度心身障がい児のための「びわこ学園」を設立するなど、その一生を社会福祉活動に捧げ、「社会福祉の父」とも呼ばれています。

 糸賀の言葉は「この子ら世の光」としていないところがポイントです。つまり、障がい児について、光を当てるべき哀れみの対象として見るのではなく、当事者である障がい児こそが、社会の内側から新しい社会を形成していく主体であって、光り輝く希望であると考えるのです(※1)。こうした糸賀の思想は、現在でも社会福祉に携わる人に多大な影響を与えて続けています。私自身も公務員時代にこの言葉に出会い、弁護士となった今でもその考え方を大切にしています。

 糸賀の思想との関係で注目されるのが医療的ケア児支援法(「医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律」)です。この法律は、医療的ケア児(※2)のみならず、そのご家族も含めて、当事者として捉えて、国や地方公共団体をはじめとして、社会全体で医療的ケア児及びそのご家族を支えていこうとするものです。そして、法律の運用にあたっては、医療的ケア児の就園・就学の問題を恩恵的に捉えるのではなく、医療的ケア児の就園・就学の権利を保障し、ともに学ぶことによって、多様性を認め合う豊かな社会が形成されるよう考えていくべきではないでしょうか。

 第二東京弁護士会では、医療的ケア児及びそのご家族に対する支援の一環として、2018年より、毎年電話相談(「医療的ケア児就園就学などホットライン」)を実施しています(2021年から東京弁護士会と共催。2023年は対象を拡大し「障害のある子どもの就園・就学ホットライン」として実施)。今年も多くのご相談が寄せられました。

 医療的ケア児に対して何の支援も無い状況から、全国約2万人の医療的ケア児及びそのご家族が勇気を持って声を挙げ続けてきたことで、医療的ケア児支援法の成立をはじめとして、社会の支援や理解の輪が広がっています。

 今後も、第二東京弁護士会では、今後も医療的ケア児をはじめ障がい児の育ちと学びのために取り組んでいきますので、お困りごとがある場合はお早めにご相談ください。

 なお、医療的ケア児に対するご相談は、電話相談以外でも以下のとおり受け付けていますので、お気軽にご利用ください。

  • ゆとりーな(高齢者・障がい者総合支援センター)

電話相談(相談無料。東京弁護士会、第一東京弁護士会、第二東京弁護士会共通)

相談日 月曜日~金曜日(祝日を除く)午前10時~正午、午後1時~4時

電 話 03-3581-9110

※面接相談もあります(要お問い合わせ)

予約・お問い合わせ電話番号 03-3581-2250

※1 蜂谷俊隆(2018).「糸賀一雄と『人間の尊厳』の思想」『人間福祉学研究』11(1)

※2 日常生活及び社会生活を営むために恒常的に医療的ケア(人工呼吸器による呼吸管理、喀痰吸引その他の医療行為)を受けることが不可欠である児童をいう。