コラム

災害時における福祉避難所の役割について

 この度の能登半島地震により被害を受けられた皆さまに、心よりお見舞い申し上げます。またお亡くなりになられた方々のご冥福をお祈りするとともに、ご遺族に心からお悔やみを申し上げます。

 今回は、震災などの災害時における「福祉避難所」についてご紹介いたします。

 高齢者や障害を持っている方など、特別な配慮が求められる方々は、一般の避難所において生活することが困難なことがあります。そのため倒壊の危険がある自宅での生活や車中泊を余儀なくされ、結果としてご本人やご家族の健康を害してしまうおそれがあります。

 このような方々を対象として、「福祉避難所」という制度があります。

 福祉避難所は、災害対策基本法による避難所の指定基準の一つとして、災害対策基本法施行令に規定されているものであり、一般的な避難所とは異なり、災害発生時に「要配慮者の円滑な利用の確保、要配慮者が相談し、又は助言その他の支援を受けることができる体制の整備その他の要配慮者の良好な生活環境の確保に資する事項について内閣府令で定める基準に適合するものであること。」といった基準が定められています(災害対策基本法施行令第20条の6第5号及び内閣府令)。

 令和6年1月の能登半島地震においても、輪島市などの各市町村において、特別養護老人ホーム等を利用した福祉避難所が複数開設され、受け入れを行っています。

 とはいえ、福祉避難所として指定されていた建物自体が損壊被害を受けている、医療・介護従事者が不足している等の理由で受け入れが困難なケースもあるとのことです。また、見知らぬ場所での共同生活により避難者の方の症状が悪化し、さらには支援者の方々の疲労につながるといった問題もあり、今後の課題となっています。

 なお、福祉避難所は、これまで、いったん通常の避難所に身を寄せたあと、必要に応じて福祉避難所に移るという、二次避難所として扱われていました。

 しかし令和3年に国のガイドラインが改められ、自治体はあらかじめ受け入れ対象者を調整し、直接、福祉避難所に行くことができるように体制を整えることが求められています。

 もっとも、現段階ではまだ直接避難の体制が整っていない市町村も多いようです。

 災害時、要配慮者の方ができるだけストレスなく避難し、過ごせる場所として、今後も各自治体における体制づくりが望まれます。