会長声明・意見書

公益通報者保護専門調査会報告書に対する会長声明

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更新日:2019年01月31日

2019年(平成31年)1月31日
第二東京弁護士会 会長 笠井 直人
18(声)第14号

 内閣府消費者委員会公益通報者保護専門調査会は、内閣総理大臣からの2018年1月15日付け諮問を受け、「公益通報者保護法の規律の在り方や行政の果たすべき役割等に係る方策を検討」し、2018年12月27日に公益通報者保護専門調査会報告書(以下「本報告書」という。)をまとめ公表した。

 当弁護士会は、2018年10月18日付けで「『公益通報者保護専門調査会 中間整理』に対する意見書」を取りまとめ、同中間整理における論点について意見を表明したところである。

 本報告書は、通報窓口担当者等の守秘義務、解雇を含む不利益取扱いに関しての立証責任の転換、通報者の範囲に元役員、現在過去を含めた取引先事業者等を含めること、通報を裏付ける資料の収集行為の刑事責任免責など、幾つかの重要な論点については今後検討すべき課題とするにとどめている。
 また、不利益取扱いに対する行政措置としての命令・罰則や刑事罰の導入を否定し、一元的窓口の権限を限定的に解するなど、公益通報者の保護及び通報対応の実効性を確保する観点からは、不十分な側面は否めない。中でも、通報対象事実を一定の法令違反の事実に限定している点については、重大な懸念が残るところである。

 しかしながら、本報告書は、①通報者の範囲に退職者及び役員等を含める、②通報対象事実に行政罰や行政処分の対象となる行為を追加する、③行政機関への通報における真実相当性の要件を緩和する方向で検討する、④行政機関以外の外部への通報の特定事由による保護要件を一部広げる、⑤民間事業者及び行政機関に対し、内部通報体制の整備を義務付ける、⑥行政通報の一元的窓口を消費者庁に設置する、⑦通報を理由とする不利益取扱いに対する行政措置を導入することなど、全体として公益通報を進める方向性の提言をしており、この点は当弁護士会の意見に沿うものであって、評価できる。

 当弁護士会は、通報者の保護及び健全な社会を実現するため、今後の課題とされた論点については引き続き議論を深めるとともに、本報告書で通報者保護の方向性が示された論点については、更なる先送りをすることなく速やかに公益通報者保護法を改正するよう求めるものである。

公益通報者保護専門調査会報告書に対する会長声明(PDF)

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