会長声明・意見書

法律事務所に対する捜索に抗議する会長声明

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更新日:2020年02月06日

2020年(令和2年)2月6日
第二東京弁護士会 会長 関谷文隆
19(声)第9号

 2020年(令和2年)1月29日、東京地方検察庁の検察官らは、刑事被疑事件について、関連事件の元弁護人であった弁護士らの法律事務所の捜索を行った。
 捜索に先立ち、同弁護士らは、押収拒絶権を行使して捜索を拒否し、秘密性がない資料を任意に提出しようとした。しかし、検察官らは、あえて同資料を受け取らず、無断で裏口から同法律事務所に立ち入り、退去要請を無視して滞留を続け、法律事務所内のドアの鍵を破壊し、事件記録等が置かれている弁護士らの執務室内をビデオ撮影するなどした。
 弁護士には、業務上委託を受けたため保管し又は所持する物で他人の秘密に関するものについて、刑事訴訟法上、押収拒絶権が保障されている。
 弁護士がその職務を行うにあたっては、依頼者から個人の秘密を打ち明けてもらう必要があるが、弁護士に押収拒絶権が保障されているからこそ、依頼者は安心して秘密を打ち明けることができ、弁護人は被疑者及び被告人の権利・利益を擁護するため最善の弁護活動を尽くすことができる。
 押収拒絶権は、個人の秘密を保護することを超えて、秘密を託される業務に対する信頼を保護するために存在している。そして、押収拒絶の対象物か否かは、委託を受けた弁護士が判断することであり、押収を拒絶された場合は、押収対象物の捜索もできないと解されている。
 本件において、検察官らは、捜索において押収拒絶権を行使された結果、弁護士らが捜索開始前に任意に提出しようとした資料のみを押収した。このことからも明らかなように、検察官らは、押収拒絶権を行使されれば押収できるものがないことを知りつつ捜索を行ったものであり、そもそも捜索を行う必要性はなかったのである。
 以上を前提とすれば、検察官らが無断で法律事務所に立ち入り、法律事務所内のドアの鍵を破壊し、弁護士らの執務室内をビデオ撮影するなどした行為は、弁護士に押収拒絶権を認めた法の趣旨に反し違法というほかない。
 かかる違法行為は、押収拒絶権が保障された弁護士業務に対する信頼を失わせるものであり、被疑者・被告人の憲法上の弁護人依頼権の実質的な保障という観点からも、我が国の刑事司法の公正を著しく害するものと言わざるを得ない。
 当会は、今回の検察官らの上記行為に抗議するとともに、二度と同様の行為を行うことがないよう求める。

法律事務所に対する捜索に抗議する会長声明

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