会長声明・意見書

公益通報者保護法改正に関する会長声明

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更新日:2020年07月06日

2020年(令和2年)7月6日
第二東京弁護士会 会長 岡田 理樹
20(声)第3号

 2020年6月8日、公益通報者保護法の一部を改正する法律案が参議院において全会一致で可決され、成立した。2004年に同法が制定された際の附則には施行後5年の見直しが定められていたが、2006年4月の施行から実に14年後の改正となった。

 今回の改正は、公益通報者の範囲に退職者(退職後1年以内)及び役員を追加したこと、通報対象事実の範囲に行政罰の対象となる行為を追加したこと、本法第3条第1項第2号に定める行政機関への通報について、氏名等を記載した書面を提出した場合にはいわゆる「真実相当性」の要件を大きく緩和したこと、本法第3条第1項第3号に定める行政機関以外の外部(報道機関など)への通報が保護されるケースを拡張したこと、公益通報対応業務従事者に対して罰則付きの守秘義務を課したこと、通報者が通報行為に伴う損害賠償責任を負わないことを明文化したこと、従業員数が300人を超える事業者に対して内部通報体制整備を義務付けしたことなど、内閣府消費者委員会公益通報者保護専門調査会の2018年12月27日付け報告書に示された方向及び従来の当会の意見書や会長声明などに概ね沿っており、公益通報がより行い易くなり、公益通報者の保護が強化された点については評価できるものである。

 他方、今回の改正については、通報者への不利益取扱いに対する行政措置・刑事罰の導入、解雇等不利益取扱いが通報を理由とすることについての立証責任の緩和、退職者の期間制限の在り方、通報対象事実の範囲、取引先等事業者による通報、証拠資料の収集・持ち出し行為に対する不利益取扱い等について、諸外国における公益通報者保護に関する法制度の内容及び運用実態を踏まえつつ検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずることの附帯決議がなされている。
これらの論点は、当会が見直しを求め続けてきたところであり、公益通報を行った後の救済措置を法的に整備するなど、公益通報者保護を実効あらしめる改正が今後も必要である。本改正の附則には施行後3年の見直しが明記されており、その際にはこれらが実現されるよう求める。

 当会は、広く市民に対して、本改正の内容を知っていただく機会を設けるとともに、当会が設置する公益通報相談がより利用しやすいように体制を整えることによる公益通報の実効性確保と通報者保護に努め、外部通報窓口を設置する事業者からの相談にも中立的な立場で対応することにより、公益通報制度がよりいっそう活用されるよう邁進する所存である。

公益通報者保護法改正に関する会長声明(PDF)

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