会長声明・意見書

旧優生保護法による被害者の被害回復を求める会長声明

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更新日:2020年07月27日

2020年(令和2年)7月27日
第二東京弁護士会会長 岡田 理樹
20(声)第4号

 2020年6月30日、東京地方裁判所民事14部は、旧優生保護法に基づき実施された強制不妊手術に関する国家賠償請求訴訟について、原告の請求を棄却する判決を言い渡した。
 判決は、本件不妊手術が憲法13条で保護された実子をもつかどうかについて意思決定するといった私生活上の自由を侵害するものであったことを認めており、かかる判示は評価できる。
 しかしながら、判決は、改正前民法724条後段所定の除斥期間の起算点を遅らせる余地があるとしても、その時期はせいぜい昭和60年代、どんなに遅くとも旧優生保護法の改正のあった平成8年6月18日時点までとして、本件訴訟の提起(平成30年5月)が除斥期間20年を経過していたことを理由に原告の請求を棄却した。また、判決は、国において優生手術の被害者の被害回復措置をとるべき法的義務はなかったとして、国家賠償とは別の特別立法の必要不可欠性を否定し、立法不作為についても国賠法上の違法は認められないと判断しており、結果として、早期の司法判断による被害者の救済がなされなかったことは遺憾である。

 そして、上記判決に先立ち、昨年、優生手術の被害に関して「旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者に対する一時金の支給等に関する法律」が成立・施行されたが、対象者への一時金支給額は320万円であり、交通事故によって生殖機能を喪失した場合に一般的にその損害賠償額は1000万円を超えることと比較しても極めて低額であり、被害回復には不十分であることも看過できない。

 責められるべき点は何一つない被害者約2万5000人は、旧優生保護法下において不良な者と烙印を押され、優生手術によって強制的に子をもつ機会を奪われた。かかる優生手術は、障害のある者等が社会で生きることを根本から否定する優生思想の象徴であり、個人の尊厳(憲法13条前段)を著しく毀損するものである。そして、国の優生政策によって浸透した差別や偏見は、現代社会においても脈々と息づいており、これまで被害者らが声をあげられなかった実情を十分に受け止めなければならない。

 当会は、人権救済基金援助金を支出し、上記裁判の帰趨を見守ってきたところであり、旧優生保護法による被害者らの被害回復のため、そして誰しもが個人として尊重される社会を実現するためにも、司法ないし立法による救済がなされるよう今後も尽力する旨の決意を表明するものである。

旧優生保護法による被害者の被害回復を求める会長声明(PDF)

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