会長声明・意見書

新型コロナウイルス感染症拡大に伴う差別・偏見、誹謗中傷等の人権侵害を許さないことを決意する会長声明

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更新日:2020年08月11日

2020年(令和2年)8月11日
第二東京弁護士会会長 岡田 理樹
20(声)第5号

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、本年7月に入って以降、再び急速に拡大しています。厚生労働省オープンデータによれば、8月7日には、全国の新規陽性者数が過去最高の1595名に達し、重篤な患者数も急激に増加しています。感染によって命を落とされた方のご遺族に心からお悔みを申し上げるとともに、闘病中の方の一日も早い回復をお祈りします。
 当会は2020年(令和2年)3月10日に「新型コロナウイルスの影響を受ける皆様の支援に関する会長声明」を発出し、罹患した方や濃厚接触した方に対していわれのない差別や誹謗中傷がなされていると報じられていることについて、感染症に関する正しい知識を持ち、その予防に必要な注意を払うよう努めるべきこと、感染症の患者等の人権が損なわれることがないようにすることが求められていることを指摘しました。また、様々な相談窓口を設け、新型コロナウイルス感染症に伴う諸問題にお困りの方々に寄り添うとともに、感染された方々の人権を擁護する活動に取り組んできました。
 しかし、残念ながら、新型コロナウイルス感染に関する差別や偏見はさらなる広がりをみせています。感染拡大が大都市圏から地方へも波及するなかで、SNSやインターネット上で感染者個人やその家族、居住先や勤務先などを特定し、いわれのない誹謗中傷を行うような事例、さらには、感染リスクと闘いながら医療現場の最前線に立っている医療・看護従事者や介護従事者、物流など社会を支えるいわゆるエッセンシャルワーカーや、その家族に対しても差別や中傷が向けられる事例などが次々と報道されています。
 感染を恐れ、その予防に手を尽くすことは、感染拡大を防止するために必要なことです。しかしながら、その甲斐なく感染してしまった方々は、いわば新型コロナウイルス感染症という災害の被害者であり、必要なのは温かい支援です。そして、他の災害同様、社会で弱い立場にある人ほどその影響が大きく、より一層の支援が必要であることに留意すべきです。
 感染者やその関係者に差別や誹謗中傷を行うことは、人格権侵害として人権侵害にあたり、許されるものではありません。まして、感染のリスクを負いながら私たちや社会を支えてくださっている医療従事者やエッセンシャルワーカーの皆さんに対する差別や誹謗中傷などは論外であり、これらの方々に対しては、社会からの高い尊敬と国、自治体等からの力強い支援こそが必要です。
 これらの差別や偏見、人権侵害は、「社会的感染症」と呼ばれ、未知の感染症に対する恐怖と結びついていることが指摘されています。われわれの社会は、差別・偏見などの人権侵害と闘うと共に、感染症に対する恐怖を克服する努力も求められています。そのためには、正しい医学的知識の普及とともに検査体制・医療体制の一層の充実も必要不可欠です。必要な検査・医療が受けられない状況は、恐怖を募らせ、差別と偏見を助長させます。当会は、かかる人権侵害の拡大を防止するため、国及び地方自治体に対し、必要な方が必要な検査・医療を受けられる体制を確立するために、予算の手当を含めた必要な施策を講ずることを求めます。
 新型コロナウイルス感染に対する差別や偏見、誹謗中傷は何も生み出さないばかりか、人々を傷付け、社会を分断し、収束を一層遠のかせるものでしかありません。当会は、さらなる感染の拡大を受け、そのような中でも差別や偏見を許さず、困っている皆様に寄り添い、その解決に向けて今後も全力を尽くすことを、ここに改めて決意するものです。

新型コロナウイルス感染症拡大に伴う差別・偏見、誹謗中傷等の人権侵害を許さないことを決意する会長声明

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