会長声明・意見書

全ての困窮学生に「学生支援緊急給付金」の平等な給付を求める会長声明

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更新日:2021年01月26日

2021年(令和3年)1月26日
第二東京弁護士会会長 岡田 理樹
20年(声)第8号

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染者数は、昨年末より再び増大しており、本年1月8日、再度の緊急事態宣言が発布されるに至った。すでにこれまでの同感染症の蔓延のもとで世帯収入、アルバイト収入等が激減している多くの学生が、今回の事態に直面してさらに困窮し、学業を続けていくことが困難となる事態が想定されるところである。
 ところが、同感染症に関する政府の支援措置の一つである「学生支援緊急給付金」制度(以下、「本給付金制度」という。)に関して、以下のような合理的理由のない差別的措置が設けられ、同じようにコロナ禍のもとで学業を続けようとしているものであるにもかかわらず、一部の学生のみが支援を受けられない状況となっている。
 当会は、将来ある学生がコロナ禍に敗けて学業を諦めてしまうことのないよう、全ての困窮学生に対する平等な支援を実現するため、政府に対し、かかる不合理な差別的措置を早急に是正するよう求める。

 是正すべき第一の点は、本給付金制度に関し、外国人留学生にのみ「成績優秀者」の要件が課せられていることである。本給付金制度においては、一般の学生については学業成績が優秀ではない者であっても支援を受けられる仕組みがあるにもかかわらず、外国人留学生に対しては、「前年度の成績評価係数が2.30以上であること」(概ね成績上位25〜30%といわれている。)が要件とされ、支給要件が相当程度加重されている。この点については、各地の弁護士会を始めとして多方面からその不合理性が指摘されたことから、文部科学省は、本給付金制度のQ&Aなどで、学生の通う大学が特に必要と認めた場合は例外的に認め得ると修正したが、外国人留学生の成績要件自体は維持しており、制度的な差別は解消されておらず、現にアルバイト収入に頼ることの多い外国人留学生の困窮は深刻である。
 是正すべき第二の点は、本給付金の対象学校から朝鮮大学校が除外されていることである。朝鮮大学校は、在日コリアンの学生に対して高等教育を行う教育機関として設立され、各種学校の認可を得て運営されているものであるが、卒業生には日本の大学院への入学資格や、税理士、社会保険労務士、保育士、社会福祉士等各種の資格試験の受験資格が認められている高等教育機関である。ところが本給付金制度においては、外国大学の日本校や日本語教育機関(法務省が告示で定めるもの)は制度対象とされているにもかかわらず、同じく学びの場である朝鮮大学校のみが特段の理由なく除外されている。朝鮮大学校の学生も、他の大学等の学生と同様に、新型コロナウイルスの影響によりアルバイト等の収入が大幅に減少するなどしており、「修学の継続」のための支援が必要であるという事情に変わりはなく、差別的取扱いをする合理的理由は見出し難い。
 結局のところ、上記、外国人留学生に対する支給要件の加重や朝鮮大学校の制度からの排除は、コロナ禍における困窮学生支援の制度における、国籍や民族にもとづく合理的理由のない差別的取扱いと考えざるを得ず、憲法14条の平等原則、人種差別撤廃条約5条、社会権規約2条2項、13条1項、2項に違反するものである。
 2020年5月に本給付金制度が開始された後、同年7月には追加配分が、同年12月には再追加配分が実施されているが、多方面からの批判にもかかわらず、いずれの配分の際も上記の取扱いが維持され、不平等が是正されないままとなっている。全ての困窮学生に対する平等な支援を実現するため、上記の不合理な差別は早急に解消されるべきである。

 コロナ禍はあらゆる人に平等に襲いかかるものであり、全ての人が手を携えて対抗していかなければならないものである。当会は、今後新たに策定されるであろう新型コロナウイルス感染症に関するあらゆる援助・支援制度においても、国籍や民族等を理由とする差別的取扱などがなされず、全ての人に対する平等な援助・支援が実現されるよう、政府を始め各方面に対して求めていく所存である。

全ての困窮学生に「学生支援緊急給付金」の平等な給付を求める会長声明f(PDF)

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