会長声明・意見書

森喜朗・東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会会長の発言に抗議し、スポーツを含むあらゆる分野における男女共同参画の実現を求める会長声明

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更新日:2021年02月16日

2021年(令和3年)2月16日
第二東京弁護士会会長 岡田 理樹
20(声)第9号

 2021年2月12日、森喜朗・東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会(以下「組織委員会」という。)会長は、日本オリンピック委員会(以下「JOC」という。)臨時評議員会の場において、「女性がたくさん入っている理事会の会議は時間がかかります」、「女性っていうのは競争意識が強い」、「発言の時間をある程度制限、規制していかないとなかなか終わらない」などという一連の女性蔑視・差別発言をしたことに対する内外からの厳しい批判を受けて、辞意を表明した。
 この森会長の一連の発言は、客観的事実に基づかず、男女の固定的な性別役割分担意識や性差に関するアンコンシャス・バイアス(無意識の思い込み)を臆面もなく発信したものであり、これが組織委員会の会長であり、わが国の首相の立場にあった人物の発言として内外に大きな衝撃を与えた。森会長のこの一連の発言は、組織委員会の会長の立場で、JOCの評議員会という公式の場でなされたものであり、「オリンピック憲章の定める権利および自由は人種、肌の色、性別、性的指向(略)などの理由による、いかなる種類の差別も受けることなく、確実に享受されなければならない。」(オリンピズム根本原則の第6項)と定めるオリンピック憲章及び東京2020大会ビジョンである「多様性と調和」の理念に真っ向から反するものであるばかりか、わが国政府が推進し、日本全体が真摯に取り組んできた男女共同参画社会実現への努力を根底から否定するものである。それにもかかわらず、JOC会長をはじめその場にいたものはそれを制止・批判することもなく、この発言が公になった後も、各界で森会長を擁護する発言すら見られたことは、ジェンダー・ギャップ指数が世界第121位(Global Gender Gap Report 2020)といわれる現代日本社会が抱えるこの問題の根深さを露呈したものと言え、およそ看過することはできない。
 当会は、森会長の発言に対して強く抗議するとともに、政府に対し、スポーツを含めたあらゆる分野において、アンコンシャス・バイアスの解消に向けたより実効性ある具体的措置、施策を早急に講じるよう強く要請する。そして、組織委員会及びJOCに対しては、再発防止と組織運営の見直し及び「スポーツ団体ガバナンスコード」で設定された女性理事の目標割合(40%)達成に向けた取組みを強く求める。
 当会は、2007年に、全国の弁護士会に先駆けて男女共同参画基本計画を策定し、爾来、会の内外において、ジェンダーに起因するあらゆる偏見・差別の解消に努めてきた。当会は、今回の事態を一組織や一個人の問題に矮小化し、批判して終わりにすることなく、自らも含め、今後とも、継続的にダイバーシティ(多様性)を推進し、我が国が真の男女共同参画社会となるよう力を尽くす所存である。

森喜朗・東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会会長の発言に抗議し、スポーツを含むあらゆる分野における男女共同参画の実現を求める会長声明(PDF)

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