会長声明・意見書

憲法記念日を迎えての会長声明

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更新日:2021年05月03日

2021年(令和3年)5月3日
第二東京弁護士会会長 神田 安積
21(声)第1号

 本日、憲法施行から74年となる憲法記念日を迎えました。
 1年にもわたる新型コロナウイルスの感染拡大によって、私たちの社会に貧困と格差が存在することが改めて可視化されました。中でも、女性や子どもたち、そして日本に住む外国人などの生活を直撃し、様々な人々が厳しい生活を強いられています。
 人々の生存の確保なくして、いかなる自由や権利の保障もありえません。生存権は人権保障の基礎であり、私たち弁護士は、コロナ禍の長期化の中で苦しんでいる人たちに、憲法25条が保障する「健康で文化的な最低限度の生活」がいきわたるための努力を尽くさなければなりません。「誰一人取り残さない」というSDGsの基本理念は、弁護士そして弁護士会のあるべき原点でもあります。

 また、この1年は、人間の平等や多様性に関わる問題について様々考えさせられた年でした。本年に入ってからは、同性婚の禁止は憲法14条違反であると判断した札幌地裁の判決があり、他方で、森喜朗元首相の女性蔑視・差別発言に対する厳しい非難もありました。
 長きにわたり検討課題となったままである選択的夫婦別姓制度については、世論調査では賛成が反対を上回りつつある中、最高裁大法廷が本年中に再び憲法判断を示す見込みです。当会は、国に対して民法750条の改正を求めてきましたが(2018年6月13日付け会長声明)、これまで改姓を余儀なくされてきた多くの人たちの願いが司法審査を通じて実現するように、憲法の番人にふさわしい画期的な判断がなされることを期待するものです。

 国際的には、世界の各地で人権や自由が危うくなりつつある出来事が続いており、世界に向けて平和主義の重要性を訴えている日本国憲法の意義や理念はますます重要になっています。現在、国会で議論が進められている憲法改正国民投票法については、最低投票率の定めがないこと、有料意見広告の在り方など、日弁連や当会が指摘してきた問題点が改善されるに至っておらず、このままでの拙速な法案の採決に反対します。また、集団的自衛権の行使を認めたいわゆる安保法制については、立憲主義、恒久平和主義の基本的理念に反するものとして廃止を求めてきましたが、引き続き街頭宣伝を始めとする取り組みを継続していきます。

 立憲主義において司法や弁護士が果たす役割は重要です。当会は、憲法の期待に応えるべく、様々な人々のニーズを把握して人権擁護のために努力している会員の活動をサポートするとともに、今後も様々な提言を発信していく所存です。

憲法記念日を迎えての会長声明(PDF)

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