会長声明・意見書

出入国管理及び難民認定法改正法案に反対する会長声明

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更新日:2021年05月06日

2021年(令和3年)5月6日
第二東京弁護士会会長 神田 安積
21(声)第2号

 出入国管理及び難民認定法(入管法)改正案の衆議院での審議が大詰めを迎えています。
 この法案の内容は多岐にわたりますが、たとえば、①難民認定申請中は何度でも送還が停止される規定(送還停止効)の適用を2回までに制限すること、②一定の条件の下で施設外での生活を認める「監理措置」の制度を新設すること、などの内容からなります。
 法務省は、本改正を行う理由について、国外退去が確定したにもかかわらず、これを拒む外国人を強制的に退去できない事情があることが、当該外国人の収容の長期化につながっているとして、退去強制手続を時代に即したものに改めて、送還忌避・長期収容の解決を図る必要があると説明しています(出入国在留管理庁HP)。

 法務省の説明は一見もっともな内容に思われるかもしれません。しかし、本年3月31日、国連人権理事会の特別報告者(移民の人権・宗教と信条の自由・拷問等の3名)と恣意的拘禁作業部会は、極めて異例なことに、4者共同にて日本政府に対し、法案が、自由権規約をはじめとする国際法に違反しており、再検討を求める旨の書簡を公開しました。また、日弁連や多くの弁護士会が本法案に反対する会長声明や意見書を発しており、当会においても、本法案の基となった「送還忌避・長期収容問題の解決に向けた提言」に反対する意見書(2020年11月16日付け)を発しています。

 国際人権機関や私たち弁護士が本法案に懸念を有し、反対することには理由があります。
 いつ出られるかも分からない長期収容問題についてはこれまでも国際人権機関から再三にわたり改善が求められてきたものであり、速やかに解消されなければなりません。しかし、長期収容に至っている被収容者には難民申請者も多く含まれています。日本は難民条約加盟国の中で最も難民認定率が低い国であり、諸外国では難民認定されているミャンマーのロヒンギャなどもほとんど保護されていません。保護されるべき申請者が保護を求めてやむを得ず難民申請を繰り返しているのであれば、改善されるべきは難民認定の在り方です。回数制限を設けて、送還停止効に例外を設けることは、迫害を受けるおそれのある国・地域への追放・送還を禁じる国際法上の原則(ノン・ルフ-ルマン原則)にも反します。
 長期収容を解決するための制度とされる「監理措置」も問題です。同措置の下では、監理人となる者が、対象者の生活状況を把握し、逃亡の兆しがあれば当局への報告義務を負い、義務違反があれば過料の制裁を科せられます。このような届出義務を課せば、守秘義務を負う弁護士はもちろんのこと、親族や支援団体においても対象者の尊厳を守る支援者との立場と両立できません。そもそも監理者に対象者の管理・監視をさせること自体が問題ですが、監理人のなり手として想定されていた人たちは、制裁を覚悟で監理人に就任するか、監理人になることをやむなく辞退するかの選択を迫られることになります。「監理措置」は、弁護士として許容することができない制度なのです。

 当会は法案に反対するとともに、長期収容の解決のためには別のアプローチが必要であると考えます。この点に関し、国連の恣意的拘禁に関する作業部会は、2020年8月28日に、日本の入管制度は、国際法違反の恣意的拘禁に該当することを認める意見を採択し、入管法の改正を求めました。
 私たちの今の生活は様々な国籍の人々との共生の上に成り立っています。当会は上記の4者共同書簡・作業部会意見などの国際標準に照らし、たとえば、入管収容制度に関して、厳格な実体的要件を明文上規定すること、事前の司法審査に基づき発付される令状に基づく制度(令状主義)に改めること、令状発付に対して司法による簡易迅速な不服審査手続を設けること、退令収容に期間の通算上限を法定することなどが必要であると考えるものであり、その実現を求めるとともに、被収容者の人権や尊厳を守るために引き続き活動していく所存です。

出入国管理及び難民認定法改正法案に反対する会長声明(PDF)

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