会長声明・意見書

18歳・19歳に関する改正少年法についての会長声明

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更新日:2021年05月25日

2021年(令和3年)5月25日
第二東京弁護士会会長 神田 安積
21(声)第3号

 本年5月21日に改正少年法が成立しました。
 今回の改正の過程では、2016年に選挙権年齢が18歳に引き下げられ、また2022年4月から成年年齢が18歳となることに伴い、少年法の適用年齢の引き下げが問題になりました。しかし、成長発達の機会を保障する少年法が有効に機能してきたことを踏まえ、適用年齢を20歳未満のまま引き下げないこととし、18歳・19歳の事件もすべて家庭裁判所に送致して、少年の成育歴や環境を詳細に調査することが維持されました。このことは、少年法の運用に携わってきた様々な関係者や多くの弁護士会から反対意見が表明されたことの成果に他なりません。
 もっとも、改正少年法は、18歳・19歳を「特定少年」と位置付けたうえで、現行制度では故意に人を死なせた場合に限られている原則逆送(成人と同様の刑事裁判を受けること)の対象を、強盗や放火などの事件にも拡大し、厳罰化を企図しています。その結果、保護・教育に重点を置いた少年院で処遇されてきた18歳・19歳の一定数が、刑事裁判を受けることになり、今後は実刑判決を受けると、処罰目的である少年刑務所に一律に収容されることになります。少年事件の背景にある虐待やいじめなどの事情を踏まえたきめ細かなサポートが受けられず、立ち直りの機会が与えられなくなれば、再犯防止の観点からも大きな懸念が存します。そこで、家庭裁判所は、原則逆送事件において、例えば、強盗罪のように犯情の幅が極めて広い犯罪類型については、犯情の軽重のみならず要保護性についても十分に考慮して逆送の当否を慎重に判断することが必要であり、このことは参議院法務委員会の附帯決議においても明示されているとおりです。
 また、改正少年法は、公判請求された18歳・19歳のいわゆる推知報道を解禁しています。この点に関して、衆議院・参議院の各法務委員会の附帯決議は、「インターネットでの掲載により当該情報が半永久的に閲覧可能となることをも踏まえ、」「特定少年の健全育成及び更生の妨げとならないように十分配慮されなければならない」旨定めています。しかし、この附帯決議の内容こそ、推知報道解禁の問題の深刻さをむしろ裏付けるものであり、実名など推知情報がその報道に本当に不可欠か、メディアなど伝え手の責任と説明義務が厳しく問われることになります。
 私たち弁護士は、弁護人・付添人として、原則逆送事件でも保護処分の選択を求めるなど最善の活動に尽力するとともに、当会においては、施行後5年後見直しの機会を見据えつつ、改正少年法の問題点を裏付ける立法事実を収集分析し、問題点を解消するために必要な改正に向けて尽力していきます。

18歳・19歳に関する改正少年法についての会長声明(PDF)

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